
国民の半数は女性である。言うまでもないことであるが、司法は女性をどう見てきたか。裁判官は女性を男性と対等に扱ってきか。女性の権利は裁判によって十分守られてきたか。差別的判決はなかったか。逆に女性は司法を十分活用できたか。女性にとって裁判所は人権の砦として役に経つ機関であるとのコンセンサスが得られたためしがこれまでにあったか?
「女性と司法」の関係はこれまであまりにも語られることがなかった。本書は「女性と戦後司法」の諸問題を、関係各資料と著者自身の弁護士としての40余年にわたる経験を通じて世に問う、戦後司法史の女性版と言うべきものを目指している。あるいは女性史の司法版ともいえる。
「女に裁判はわからない」「女性は裁判官に向いていない」ーー45年前の司法研修所で裁判教官から女性差別発言が繰り返された事実は、司法界でさえ知る人は今やごく少数だ。森元総理の女性蔑視発言が社会問題になって同氏がオリンピック組織委員長を辞任する事態になったのも記憶に新しい。
男社会を女性弁護士として生きてきた著者自身も語りつつ、ジェンダーと司法の関係を、幾多の実例(判例)を紹介しつつ分かりやすく解説しており、法科大学院はもとより、女性問題を研究する各地の勉強会などで、本書を教科書ないし副読本に採用するという動きも出ている。上野千鶴子さんから、ものすごく面白かった!と読後感を寄せていただいた。
男女をとわず多くの方にご一読いただきたいと願っている。
◆書誌データ
書名 :女性と戦後司法ーー裁判官、女性がおわかりですか?
著者名:中村久瑠美
頁数 :440頁
出版社:論創社
刊行日:2021/3/11
定価 :4180円(税込)
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