2011.04.07 Thu
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.この本は「連帯」という、人によっては古くさい、人によっては押しつけがましい、と思われがちな言葉をめぐって、思想史をたどってゆく試みです。19世紀末フランスという、今の日本ではあまりなじみのない場を取り上げていますが、当時の「連帯主義者」たちが取り組んだ問題そのものに注目すると、今もあまり変わっていないことにむしろ驚かされます。一世紀を経てなお人々が悩まされているのは、貧困であり、生活不安であり、なによりも「人とのつながりを欠いていること」「忘れ去られていること」「見捨てられていること」です。
日本全体に甚大な被害をもたらした今回の震災でも、被災者の声として「見捨てられている」「忘れられている」ことへの恐怖がしばしば聞かれました。一方で、自分自身の生命が危険にさらされている場合であってすら、自己利益では説明不可能な行動に出た人たちもたくさんいました。さらには、阪神大震災のときの被災者や被災自治体が、そのときの経験をもとに支援の手を差し伸べています。
こうした関係の中には、「お互いさま」という意味での対称性を、時間や空間をまたいだ非常に緩やかな形で見て取ることができます。あるとき助けられた人が、別のときに別の人を別の形で支えるというように。また、自分だったらしてもらいたいことを、まだしてもらってはいないけれど先に自分がするというように。
「連帯」とは、こうした「お互いさま」のつながりを増殖させてゆくことによって、見捨てられている、忘れ去られているといった分断された状態を脱するための言葉です。この本は、連帯の理念が生まれた歴史的土壌にさかのぼって、こうしたつながりの可能性を探ろうとしたものです。(著者 重田園江)
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