2~3年前にかかってきた外国語の相談がいつまでも気にかかっていました。緊急支援が必要かもしれない。状況がなかなかつかめない。何分かおきに途切れるのは公衆電話だから。彼女が言いました。「LINEはないですか?」 電話番号がわかればかけなおしができるのですが、携帯電話の料金を支払えないと電話機能は利用できなくなります。WiFiのつながるところではLINE電話などのアプリは使えても、AWCにはSNS相談機能がありませんでした。何度かのやり取りの後電話は途絶えました。

 AWCは1997年から国籍に関わらず女性と子どもの相談を受けています。ジェンダーに基づく暴力(GBV)が主な相談内容で、関係機関と連携しながら支援を行っています。電話、メール以外のツールでの相談は、ここ数年の課題でもありました。2020年、新型コロナウイルスにより多くの人たちは経済的な困窮におちいりました。家庭内での暴力や虐待は増加し、移民女性を含め女性たちはさらなる苦境に立たされ、相談すら難しい状況になりました。WAN基金コロナ禍対策女性連帯プロジェクトに背中をぐっと押されるように誕生したのが、「DV被害等を抱える外国人女性へのSNS相談事業 多言語SNS相談@AWC」です。

開始までの準備期間に、通訳・相談支援に関わったことのあるスタッフや新規にかかわる相談員対象に研修を行いました。(公財)パブリックヘルスリサーチセンターストレス科学研究所のイ コンシルさんを講師に、オンラインカウンセリング・LNE相談対応について学びました。さらに当センタースタッフの柿原理香子さんは、外国籍女性の支援について講義を行いました。そうして、支援活動に関わる相談員が内容、目的、相談・支援の流れ等を理解したうえで、2020年11月、英語、中国語、韓国語、タガログ語、タイ語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語の8か国語対応SNS相談をスタートすることができました。AWCのホームページには各言語で案内しています。

「多言語LINE相談@AWC」  

        2021年3月末までに、DV、在留資格、医療、出産後のケア、家族間暴力などのべ50件のSNS相談がありました。うち2件が一時保護や施設利用などの支援につながりました。また、これまで支援した女性たちにはフォローアップ事業を行っており、フードドライブによる食料支援を行ったところ、写真とともに近況報告が送られてきてその後の安否がわかりました。

当相談ツールの認知度はまだ高くないため、2021年度は相談情報カードを作成し、関連機関等においてもらい、広報に努めたいと考えています。さらに日本で生活する外国ルーツの方の多国籍化に対応し、相談できる言語の拡充をはかりたいと考えています。AWC相談員もエッセンシャルワーカーとして感染対策をしっかり行い、ジェンダー平等と多文化共生を軸に、小さいながらも歩みをとめずに活動を続けていきたいと思います。

Women’s Action Network の皆様にはAWCのこの事業へご支援下さり、スタッフ一同深く感謝しております。ありがとうございました。