
国防の要である自衛隊。ただし約22万7000人以上いる自衛官のうち、女性自衛官の割合は7.4%に過ぎず、とりわけ幹部自衛官となるとその数はぐっと少なくなります。
国内唯一の士官候補生養成機関である防衛大学校(以下、防大)をこれまでに卒業した女性は約800人。また、卒業後も多くの女性たちが自衛隊を離れます。
本著では、自らも防大生であった著者の経験とともに、防大に進学した女性たちのインタビューを行うことで、防大・自衛隊という男性社会に身を置いた女性を取り巻く環境を明らかにしました。
まず防大では、「優秀な女子学生」と「そうではない女子学生」の間に分断が起こることが見て取れます。後者の場合には、自分自身の存在意義に悩む確率が非常に高くなります。
平均として見たとき、学力や国防への志、生活態度は男子学生より女子学生の方が優秀であると感じる者は多いですが、体力やリーダーシップという観点から、自分を卑下してしまうのです。結果、防大に進学したうち、約3分の1の女性が卒業前に防大を去ります。
また、自衛隊に進んでからも、彼女たちを困難が襲います。防大ほどの体力由来の悩みは解消される一方、長時間労働や頻繁な異動といった環境が、特に子どもを持ったとき、仕事と家庭の両立を難しくさせるのです。
「子どもができると家庭を犠牲にして男性と同じようにバリバリ働くか、出世を諦めて低空飛行で続けていくか、いまの自衛隊にはそのどちらかしか選択肢がない」と話す女性は一人や二人ではありませんでした。
本を上梓してから、私のもとに寄せられる反応は大きく2つに分かれました。若い人ほど「その通りだ。自衛隊を変えなければならない」という反応が大きかったものの、年齢が上がるほど、「自衛隊の任務に男女の別はない。自衛隊の重要さを分かっていない」という意見も複数ありました。
国防という大義のもとに、いまのやり方を続けていては、人は離れていく一方だと危惧しています。女性を生かせる組織こそが、未来の前例のない戦いにおいて勝つことのできる組織になるはずです。また、それは決して自衛隊だけに限った話ではありません。どうぞ「遠い存在」ではない防大女子たちの世界を、垣間見ていただければ幸いです。
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