では、前回シモンズ大の続きをいきましょう。

 シモンズ大は、「あらゆるジェンダーを含む―Gender Inclusive」が教育の主張であり、トイレはW、M、GIと3か所あります。3番目のドアは別に気にする様子もなく、使用されているようです。最初戸惑ったのは、「プロナウン(Pronoun)は?」と聞かれたこと。メールなども名前の下にこれを付けます。

 プロナウンとは代名詞の、She, Her、Herです。だから私は名前の下にSheと入れます。これで歴然と女性であることが、というより、女性にします、という宣言になる感じでしょうか。白人でシスジェンダー(Cisgender)といえば、女性であることをあまりにも当たり前のアイデンティティとして、マイノリティを差別抑圧する存在として結構批判の対象になります。私自身は白人のCisgenderではありませんが、「女性にします」という前言の微妙なニュアンスになるのですね。

 SheとTheyの両方を入れる人もいます。だれでも全員プロナウンを書いているわけではありませんが。ただ学生をざっと見渡しても、外見はみな同じように髪が長いので、外観からでは性的指向も性自認もわからないものだなあ、と改めて思いました。

 物理的なことを一つ。写真のように、学生の勉強する場所が建物のコーナーや廊下の端の、あらゆるところに作られています。私が大学で教えていた時に、学生は自由時間に何をするか、考えたこともありません。

 でも自分が学生をやってみれば、確かになるほどです。彼女たちはよく勉強します。静かな場所を選んで、一人黙々と。私も出入りが少なく、長いソファーのある、逃れ場所をもっています。誰がどこで何をしていようと、それを気にする体質は全くありません。


   さて、学部、大学院を合わせると5000人近い学生数で、全米的には多分中堅クラスの学校ではではないかと思われます。今秋一部を除き、対面授業になってから、全員毎週コロナテストを受ける義務を求められており、屋内はもちろん授業もマスク着用です。

 大学院の学期は9月から12月までの秋学期(2つの授業。1授業2時間50分)と1月から5月までの春学期です。春学期には別の2授業を選択します。

 各授業は、特に大学院は、授業ごとの壮大なウエブシステムが出来あがっていて(ムードルという。私はヌードルとあだ名で呼んでいる)、パソコンにそれを取り込みます。ムードル内にすべての事項が入っています。毎回の授業の企画説明、集められたたくさんの論文、読むべき本の紹介。

 これらはダウンロード後、印刷します。そのままでは、鉛筆が入らないから。またその感想や意見も学生はムードルに書き込んでいく。それらへの反応を教授が書き込む。論文やエッセイは長くなるので、書いたものを印刷して手渡す。それに感想を書き込んで戻してくれます。とにかく一にも二にもパソコン。ノートに手書き派は本当にいない。タブレットも重い本も持てば、学生にはバックパックが手放せません。パソコンを持たないでいい日がほしい、とは私の嘆きです。

 たった授業2つ?いえいえ、勉強させられまくりです。日本の学生の多くにみられる授業中寝る、私語するなどは考えられない。大学とは勉強するところなり、です。先生もヴィデオ、映画、著作、研究誌から資料を集めよく勉強しておられます。ムードル以外にも、出された資料を読みなさいという指示がメールできます。これってまた別途感想を書くの?と私などオロオロ。

 さてやっと授業に到着です。授業の内容は簡単に。いわゆる目下話題になっている各論、例えば、インターセクショナリズムとか、トランス問題、クイアー理論、ファット・フェミニズム、クリップ理論等の本や論文を読み、感想を書き入れた後、教室では論議です。最近は「Bi Bisexuality, Pansexuality, Fluid, Nonbinary Youth」という本を読んで、書評を書かされました。この本は簡単に言えば、若者はもうジェンダーに拘って相手を選ばないという内容です。

スザンヌ先生(クリスティン・ギルジーン撮影)


 スザンヌ・レオナード先生と学生の8人。先生は、いささかメタボの、なりふりかまわない(ように見える)人のいい面白い方で、地域の教育委員に立候補しているけれど、もうちょっと地域のみんなが、オープン・マインドであったらいいのに、と。しばらくして選挙の結果を聞いたら通ったようです。私とは入学前にズームで話し合って、入学許可をだしてくれた恩師です。

 で8人の学生の国籍がなんとレバノン、ネパール、メキシコ、に日本の高齢の私、という実に国際色豊か。スザンヌ先生は、私が集めたわけじゃないが、こうなったのよ、と。プライバシー事情があり、授業中の写真は取れませんでした。

 授業は、大きなテレビ画面に様々な情報や課題本の要旨がでてきます。休む時は前もって言っておけば、どこからでもズームでつないでくれます。徹底的に学生に話させ、出た話題を共有のために白板への手書きもありです。


   発言は授業への参加もあるが学業評価に関わってくるから学生もよく話す。それに対するサポートがすばらしくとても励まされます。徹底していい加減でなく、真摯に学生に向き合う姿勢が素晴らしい。アメリカでは、教授であろうと名前で呼び、学生との間の距離があまりありません。といってベタベタした関係でもない。

 学生の一人、ネパールのアイシャラやメキシコのセシーにもちょっと話を聞いてありますが、長くなり過ぎました。次回に譲らせてくだい。