21世紀に入り、急速なグローバル化が進展する中で、これまであまり出会わなかった人々と仕事で出会ったり、相互関係を持つことが多くなりました。国内にも異なる文化を持つ人々が隣同士で暮らすなど、社会の多文化化が進行しています。その結果、差別問題等の社会問題は複合化しました。ジェンダー平等にかかわる問題も、例外ではありません。今、多くのフェミニストが「インターセクショナリティ」に着眼しています。同じ女性であっても、異なる文化を持ち、異なる言語を話し、異なる職業を持ち、異なる経済環境に暮らす場合、並大抵の努力では、相互理解は進みません。けれども異なる条件に生きる女性たちが、それぞれ異なる問題状況を生きていることの相互理解の上で、連帯の可能性を探ること無しには、フェミニズムそのものが成り立たなくなっているのです。
 相互理解のために最初に必要なことは、それぞれの問題に関する知識です。けれども、通り一遍の知識では、人々が抱えている問題それぞれの固有の難しさにはなかなかたどり着けません。その問題の中で苦しみ、あるいは苦しんでいる人に寄り添い、長く生きた人々の経験から、学ぶ必要があるのです。
 『新・21世紀の人権』の各章各節は、52名もの方々に書いていただいています。それぞれの執筆者は、各課題の問題に、当事者・支援者・活動者・研究者等として、長く関わってこられた方々です。それゆえ、それぞれの問題に対し、的確な見方を提示してくださっています。ここには、現代日本の様々な社会問題や差別問題が描かれています(もちろん、ジェンダー平等の問題も含まれています)。差別問題を広く知りたいと思う方は、是非まずこの書を手に取ってください。自信を持って推薦します。上野千鶴子さんも推薦してくださっています。他に類書はなかなかありません。イチオシです!
(えはら・ゆみこ)

◆目次
  第1章 21世紀の人権
  第2章 被差別部落と人権
  第3章 アイヌ民族と人権
  第4章 沖縄の人々と人権
  第5章 外国につながる人々と人権
  第6章 障害者と人権
  第7章 男女平等と人権
  第8章 性的少数者と人権
  第9章 子どもと人権
  第10章 高齢者と人権
  第11章 疾病・患者と人権
  第12章 平和と人権
  第13章 労働と人権
  第14章 環境と人権
  第15章 表現の自由と人権
  第16章 企業と人権
  第17章 地方自治と人権
  資料世界人権宣言

新・21世紀の人権

著者:江原由美子

日本評論社( 2021/08/10 )