
リーダーというと、「頼れる・強い・仕事ができる」ということを想像する。女性活躍と言われて久しいが、女性の管理職はまだまだ少ない。リーダーシップ論の著作はたくさんあるけれど、本書は、育児休業から復職をして仕事をしている女性は増えてきているものの、管理職となると一歩踏み出せない・自信がないと思うのはなぜか、なんとなく不安、そういったもやもやした思いの背景をことばにしてくれ、その不安と向き合い、むしろ生かし方のヒントをもらえる著書だと思います。
まず、本書に「マイノリティ・バイアス」というキーワードがあります。マイノリティであるがゆえに持つ「無意識の偏見」と定義されています。自分が少数派であるがゆえに必要以上に気まずくなったり、怖く感じたり、自分の存在を肯定的に捉えられなくなる感覚を指しています。そもそも、冒頭の「頼れる・強い・仕事ができる」といったリーダー像もリーダースタイルの一つであるにもかかわらず、ステレオタイプからの思い込みによるもので、必ずしもそうなる必要はない、ということも気づかされました。置かれている状況から求められるリーダー像は変わるということ、リーダーの仕事の理解、課せられているゴール設定とその道筋をたてて成果をだすためにリーダーにも様々なスタイルがあるということです。そして、不安を取り除くのではなく、不安を受け入れつつ、正体を知り、メンタルを保つという言葉が強く残りました。むしろ自信がない、不安だからこそ、会社や組織のゴールは何かという視点から成果をだしていくことで、私なりのリーダーシップは何かを考え、発揮できるのではないか、と思いました。
本書の特徴として、「Win‐Win交渉術」があります。相手が何を求めているのか、相手のゴールは何かを問い、お互いの利益最大化を目指すものです。リーダーとは無縁という方も是非一読していただきたいポイントです。お互いがより良い成果をだすことは、仕事のみならず、家族間のコミュニケーションにおいても必要なものです。リーダーシップと聞くと、組織の中でのリーダーという存在をイメージしますが、コミュニティーの中で自分らしくいるためにも、このWin-Win交渉術は、とても役立つものです。自分の立ち位置を明確にしたうえで、相手と交渉を行うことで、自分を下げたり、マイノリティバイアスにかかって妥協点を探すのではなく、両者のよりよい結果を目指すことができるため、すぐにでも実践したいものです。
現在、自分自身が二回目の育休中の身です。復職時に目指したい、いいリーダーとは何かを自分のことばにするきっかけとなりました。様々な働き方が生まれてきている現在だからこそ、自信がないことをプラスとして考えられ、自分らしいリーダーシップを見つけられる・後押ししてくれる著書だと思います。
◆書誌データ
書名 :なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか
著者名:小早川優子
出版社:日経BP
頁数 :296ページ
刊行日:2021/12/16
定価 :1650円(税込)
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