岩本美砂子(いわもと みさこ)最終講義
タイトル:日本の政策過程とジェンダー
日時:2022年2月3日
専門分野 政治学・女性学
退職年月日 2022年3月31日
プロフィール
1957年広島県尾道市出身。1980年京都大学法学部卒業、1982年名古屋大学大学院博士課程前期修了(法学修士)。1985年名古屋大学大学院博士課程単位取得退学。名古屋大学助手、三重大学人文学部法律経済学科専任講師、准教授をへて、1996年より三重大学教授。三重大学では、専門講義の他、教養教育でリレー講義「ジェンダーとセクシュアリティ」を組織、セクシュアルマイノリティや、障害のある女性、被差別部落出身女性、在日女性など、交差性(複合差別)の当事者に担当してもらう講義を運営した。
女性学と政治学の架橋を試み、女性の政治参加を論じたり、政策過程のジェンダーの視覚からの再審を行ったりしてきた。専門の講義は政治学原論の他に、政治学特論:女性と政治を担当してきたが、最終講義はこの講義の最終回であった。1997年に「女のいない政治過程――日本の55年体制における政策決定を中心に(女性学vol.5))によって、日本の政策過程のジェンダー・モデルを示した。最終講義はそのアップデート版であり、日本の政策アクター(政・官・業)における女性の少なさや、1980年代から2000年代、2つの政権交代を通じて、日本の政策過程がどのように変革したかをとらえ、ジェンダーの視点の影響の変化を論じ、また女性政治家がどのように関わってきたかを指摘した。議員立法が、ジェンダーの視点を生かした政策形成において有効なことも論じた。ジェンダー平等の政策の実現のために、女性議員・女性官僚・女性裁判官・検事も必要だが、社会運動も必要である。女性の貧困化によって、運動の担い手が減っている。まともな労働時間で生活できる収入、社会運動に関われる余裕が必要(候補者の候補も育つ)なことをも論じた。