わたしは、買い物が、嫌いではない。いや、好きだ。買い物自体というより、なにかのきっかけで特定のモノに惹かれると見境がなくなってしまうのだ。いや、そんなに胸を張って言うことでもないんですが、惹かれるのはセンスのいい人が紹介するような素敵なモノでは、決してなく、「え、それ?」と言われるようなモノなんです。
このコーナーでは、そんなわたしのモノ遍歴、買い物遍歴の一端をお話しさせてもらう、名付けて『買い物バカ一代』改め(いやそれはちょっと下品すぎ?との声に配慮し)、『買い物バガボンド八代』のお話。


【今月のテーマ・靴】ウィングチップ一筋

洋服もそうですが、どうして歩くためのシューズが、女性用と男性用でここまで違うのか? と不思議に思いませんか? わたしは、真っ黒のセーラー服を、選択肢も与えられずに着せられた中学高校生時代から、せめて、靴くらいは自由にさせてくれ、闊歩している気分にさせてくれ、という気持ちを抑えられずにいました。

田舎の中学高校生時代、わたしに開放感を「一瞬」与えてくれたのが、当時田舎のデパートでも手に入った、リーガル社製ウィングチップ(*1)。
80年代、リーガル社のローファーで登校していた人は多いはず。だけど、靴といえば、紐靴に限る。ウィングチップに目が釘付けとなった私です。

が、が、が、しかし。

ローファーはいうまでもなく、ウィングチップもまた、女性用と男性用は、見栄えがぜんぜん違う。足の形って男女でそこまで激しく違うのだろうか。
なぜ、女性用の靴は、芋虫のような形になるのか? あるいは、笹かまぼこみたいなのか?

同じスタイルで小さく作ってくれたらいいのに、と高校時代以来、靴を求めて漂流している、買い物バガボンド八代……

いくつかの出会いのなかで、現在残っているのは、このラインアップ。
でもでも、買うときはいいなぁ~、見つかってよかった!と思っていても、実際に履いてみると、どうしても小さな拘りがでてきて、気に入って買ったはずの靴にも好き嫌いがでてくる。

たとえば、右の二つのウィングチップ。
写真で見てみると、自分でもどっちも同じに見えるのですが、じつは、左側はあまり気に入らず、ほとんどはいていません、うーむ、自分でもちょっと不思議です。

ウィングチップをお店で見ると、「今買うしかない!」という気になって、一度などは紐靴でもないし、普段自分が着る服装にも合わない靴を勢いで買ってしまい、これもまた、ほとんど履いていない状態です。

こうした漂流の果てに、ようやく、ようやく、理想のウィングチップにたどり着いたのは、今年の春。長い旅ではあったけれど、とっても気に入ってます。ただ、履き心地がよいかどうか、というと、やはりかなりの疑問が。ははは、バカですよね。
〈皮が固いので、慣れてくるまできついです、気合い入れて履いてください〉と店員さんからも注意されたほどのこの靴。
なにしろ、痛い。重い。きつい。
しかもこのウィングチップ様はそれだけではない、ちゃんと靴底を手当てしてあげないと、とりわけ駅やデパートのようなツルツルした床では絶対に滑る。さらにまた、雨の日も、滑る。滑ることを思うとあまりに危険で履かない方がいいくらいだ。

それでも、履いているだけで、憧れのウィングチップの美しさが、自分に伝わってくるのです。足は重いが、心は軽い。

わたしはなぜ、そんな面倒な靴に惹かれるのだろう。
特別なモノに惹かれるわたしたち人間、そこにはきっと、なにか原因があるはず。

理想のモノを求めるバガボンド八代の旅は、まだまだ続く。

*1 つま先の革の切り替えに使われる革片(チップ)が、翼(wing)のような形をしているので、この名がつけられました。
つま先のブローグ(W型の模様穴飾り)も特徴で、「おかめ飾り」ともいわれます。クラシックな雰囲気を演出するのに適したシューズです。
         (リーガルコーポレーションのHPより)

◆今月の1品 

この連載では、毎号1品ずつ、これはという品物をご提供・ご紹介します。

<終了しました>今回は、イタリアで購入して1度しか着用していないブーツをご提供します。
価格は3000円でいかがでしょうか。売り上げは全額WANに寄付します。
さて、なんで今回このブーツを出品するのか――詳しくはフリマコーナーに。
申込方法もこちらからどうぞ。