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千田有紀編『上野千鶴子に挑む』

2011.08.12 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.「先生、退職されるなら、『退官記念論文集』をつくらなくてもいいのですか?」と聞いたら、「やだ、そんなダサいの。いらないわよ」といわれてしまった。

うーん、確かに、格好いい退職記念論文集ってあまりないけど。でも折角だから何かしたい…。

上野さんが東大に来られてから20年ほど。振り返ってみれば、時代はつくづく変わったものだと思う。

上野さんが東大に来るという週刊誌の中刷り広告をみたのは、ちょうど大学院に進学しようとする年だった。 研究者になろうと心を決めたものの、「ジェンダーなんて学問じゃない」「フェミニズムはイズム」などといわれ、内容以前のことで消耗して研究に打ち込めず焦りを感じていたわたしにとって、「東大に、あの上野千鶴子(敬称略)がくる」ということは大ニュースだったのだ。

もっともわたしたちの年代にとっては、上野さんが東大に来るというのはビッグニュースだったけど、ずっと下の学年のひとたちにとって上野さんは「気がつくと、そこにいた」というくらい上野さんが東大にいるのは当たり前のことだった。 ただ「上野が東大に来たことで何が変わったのか」ということを、上野さん自身も意識されていたし、わたしたちも周囲から絶えず問われているような気がしていた。

退職記念論文集は、たいてい中堅以上の研究論文を寄せ集めてつくられる。でもわたしたちはそれに較べれば、上野さんが遅くに東大に来られたこともあって若い。それならその若さ、未熟さを生かして、上野さんに挑み、また上野さんにリプライを貰ったらどうだろうか。

そう考えて、わたしたちが上野さんの業績についての論文を書き、上野さんが応答するという異例の退職記念論文集ができあがった。通して読めば、上野さんの今までの研究を概観できるように構成した。網羅的な組み立てでも書き手に困らなかったのは、上野さんの業績のどの部分かを指導学生が必ず受け取っていたからである。

いくつかの大学で演習のテキストに使って戴いているとの報告を戴いた。少しばかり冷や汗がでる。でも「わたしもこういう退職記念論文集をつくって貰いたいな」といわれると、ちょっとばかり誇らしい。(編者 千田有紀)

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