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母語でない日本語で人びとと係わること 『すき・やき』 楊逸

2012.05.14 Mon

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 ココちゃんこと虹智(こうち)は日本の三流私立大学に通う中国人留学生。あんまり勉強が得意でない彼女は、中国での大学受験に失敗し、日本人と結婚した姉を頼って日本にやってきた。彼女は、姉の勧めで、田園調布の高級牛鍋店でアルバイトを始める。『すき・やき』では日本語で生活をするココちゃんの日常が描かれている。彼女は大学に行き、アルバイトをし、姉一家の許に住んでいる。

 和服を着るのに四苦八苦するココちゃん、常連客はお金持ちと水商売の女性の組み合わせから、妻が痴呆症に罹った老夫婦、はたまた牛鍋店で働く女性に会いたいがために、身分不相応な高級店に通いつめる男性など、いろいろだ。

 ココちゃんは弥生人顔の牛鍋店の店長と、彼女に夢中な韓国人留学生、柳賢哲のあいだで心が揺れ動く。それにしてもココちゃんと柳賢哲のやりとりは何ともおかしい。母語ではない言葉を使って留学生同士で必死に意思疎通をはかった、みずからの体験を思い出した。

 ところでココちゃんがまさしく異文化と触れあった高級牛鍋店だが、ここで出会う客たちや和服は、「日本人」のわたしにも実は異文化である。わたしは和服を持っていないし、ましてや自分で着ることなどできるはずもない。(lita)








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タグ: / 異文化交流 / 母語