
性暴力やその被害者・加害者に対する人々のイメージはメディアの言説に大きな影響を受けていると考えられますが、本書は日本語メディアにおける性暴力の語られ方の分析を通じ、性暴力の被害者・加害者、そして両者の関連において性暴力そのものはどのように表象されイメージされているのか、また人々は性暴力に対してどのような意識をもち、それは男性と女性でどのように異なるのか、そしてどのような要素が被害者非難につながるのかを明らかにするものです。
1990年代後半から2010年代におこった性暴力事件10件の新聞記事・雑誌記事3790件を分析対象に「被害者への非難」の有無と「加害者の他者化」の有無というオリジナルの図式で言説の布置を分析、そこから見えてくるのは〈性行為への主体性の発揮〉の価値が男女によって違い、それが性暴力における被害者非難の要因にもなっているということです。
担当者としては、メディア言説を通じたちあげられる「わたしたち」の意識を問うていること――「わたしたち」こそが当事者なのだという点、また「性の二重基準」を「女性による性行為への主体性の発揮を否定・非難する一方で、性行為への主体性の発揮が認められない男性を否定・他者化する規範」ととらえ直し、女性のみならず男性にもこの二重基準が適用されていること、それが被害者非難・加害者他者化に働いていることを明らかにした点が本書の大きな価値と考えています。
「ある性暴力を『問題化すべき性暴力』と認識するか否か、その被害者を非難したり加害者を他者化したりするか否かを決めるのが、事件とは無関係の『わたしたち』である以上、『わたしたち』それ自体およびそのジェンダー差を問うことは、性暴力をめぐる語りを考えるうえで重要である。そして、男性の『わたしたち』についていえば、『異常な加害者』を他者化することによって、どのようにして性暴力を行わない『正常な男性』を立ちあげるのかを問うことなしに性暴力をなくすことはできない。性暴力は必ずしも相手の性的自己決定権を侵害してやろうという意図をもって行われるとは限らないからであり、むしろひとりよがりに相手を『愛している』から、『大切に思っている』からこそ起こっていることも十分に考えられるからである。」――「終章」より抜粋
ぜひご一読ください。
【書誌情報】
書 名:『性暴力をめぐる語りは何をもたらすのか』
著 者:前之園和喜
定価: 3080円(税別)
頁数:312頁
刊行日:2022/6/28
出版社: 勁草書房
判 型:四六判
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