夫婦別姓の今がわかる一冊

夫婦同氏制(民法750条・戸籍法74条1号)については、1947(昭和22)年の制定直後から議論があり、1980年代から議論が活発化し、1996(平成8)年には法務省から選択的夫婦別姓制度の導入を含む法案が公表され、その後も国連から改正勧告を受け続けているにもかかわらず、いまだ法改正が実現していません。

そのような中、本書は、第一次夫婦別姓訴訟(2012年提起・2015年最高裁大法廷判決)及び第二次夫婦別姓訴訟(2018年提起・2021年最高裁大法廷決定)の弁護団の有志が、選択的夫婦別姓制度を取り巻く経緯や最新の状況について、必ずしも法律に詳しくない一般の方にもわかりやすく、また、これにかかる法律論を研究されている学者の方々の検討材料ともしていただくべく、基礎から憲法論まで網羅的に説明することを目指したものです。

具体的には、まず、第1章で、選択的夫婦別姓制度に関する素朴な疑問や誤解をQ&Aの形で解きほぐした後、第2章で、同制度が求められる理由を原告等のエピソードを交えて改めて整理しました。

次に、第3章で、制定時から現在までの社会状況や国民意識のダイナミックな変化を客観的な統計数値とともに振り返り、第4章で、法務省改正案が有識者達によって数年をかけて緻密な議論の下に作成されたものであり、反対・慎重派が度々指摘するポイント(子の氏をどうするか、戸籍の記載をどうするかなど)も既に検討済みであることを、当時の議論の経過や改正案の文言と照らし合わせながら確認しました。

その上で、第5章で、通称使用裁判から始まった夫婦別姓にかかる各訴訟の流れを概観し、第6章で、第一次・第二次夫婦別姓訴訟で展開した憲法論を、その背景にあった訴訟戦略とともに解説しました。

そして最後の第7章で、第三次夫婦別姓訴訟の提起を見据えた今後の展望を述べました。

夫婦別姓も選べる制度の実現へ向けて、様々な人が、それぞれの場所で、自分にできる方法で、力を注いでいます。それらの動きが相互に作用して、すべての力が合わさることによって、憲法が実現しようとする価値(自由・平等・個人の尊重)は、必ず実現されるはずです。本書が、すべての人が生きやすい社会へ向けての一助となることを、切に望みます。

◆書誌データ
書名 :夫婦同姓・別姓を選べる社会へ ~わかりやすいQ&Aから訴訟の裏側まで~
編著者:別姓訴訟弁護団 弁護士榊原富士子・寺原真希子
頁数 :329頁
刊行日:2022/7/4
出版社:恒春閣
定価 :1980円(税込)

夫婦同姓・別姓を選べる社会へ

著者:榊原富士子・寺原真希子

恒春閣( 2022/07/06 )