本書は著者のトマ・マチューさんが、ストリート・ハラスメントをテーマにしたドキュメンタリー「街を歩く女」(監督ソフィー・ペーターズ)の動画を観たことから始まりました。著者は自分の家の前でも被害が起こっていることに驚き、被害を受けた友人たちに共感し、ネットで被害の証言を集める「クロコダイル・プロジェクト」を始めました。その証言を漫画にしたものが、本書です。
作品内では、男性がワニとして描かれています。しかし、もちろん女性・男性の対立を望んでいるわけではありません。読みながら、「ワニ」の描き方に違和感や嫌悪感を持たれた方は、ぜひ後書きからお読みください。この社会では、小説や映画、ゲームの主人公は男性の場合が多く、男性主人公に共感する癖が知らずしらずのうちについています。女性の立場や視点に共感をする機会は少なく、そのことが女性の視点に立ちづらくしています。本書は男性をワニにすることで、読者がおのずと被害をうけた女性に共感できるしかけとなっています。そうすることで、社会の構造自体が男性視点となっている社会を可視化しているのです。
また、女性であっても「ワニ」的な価値観を内面化していることがあります。女性の「ワニ」的な発言は、その酷さに比例した濃淡のある緑色で表現されています。また人間として描かれていても「ワニ」的な行動をする人物は緑色で描かれています。
後半部分の「戦略と対策」は、以下のおすすめリンクで紹介していますが、ハラスメント防止を訴え実際に活動するフェミニストや団体のワークショップなどを参考にしています。この本が、被害者にも加害者にもならないようにするにはどうすればいいか、近くで被害が起こった際にはどのように行動すればいいかなど、考えるヒントになればと思います。
〇オンラインでもご覧いただけます。
フランス語:https://projetcrocodiles.tumblr.com/
英語:https://crocodilesproject.tumblr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/projetcrocodiles/?hl=en
〇おすすめリンク
「ホラバック!」:https://righttobe.org/ (現在名はRight to be)
「ストップハラスメント」:https://stopstreetharassment.org/
本文p.133に掲載
「Stop harcèlement de Rue 路上いやがらせ反対」http://www.stopharcelementderue.org/
本文p.170に掲載
「ガランス協会」 www.garance.be
本文p.164に掲載
著者が参考にされた“NON C’EST NON” (嫌なものは嫌)フェミニストの視点での自己防衛マニュアルになっています。*フランス語のみ
https://www.editions-zones.fr/wp/wp-content/uploads/2019/01/9782355220029-non-c-est-non.html
◆書誌データ
書名 :クロコダイル ワニみたいに潜む日常のハラスメントと性差別、そしてその対処法
著者 :トマ・マチュー
翻訳 :リボアル堀井なみの 、コザ・アリーン
頁数 :180頁
刊行日:2022/8/11
出版社:かもがわ出版
定価 :1980円(税込)
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著・トマ・マチュー、翻訳・リボアル堀井なみの 、コザ・アリーン『クロコダイル ワニみたいに潜む日常のハラスメントと性差別、そしてその対処法』 男性をワニに描くことで女性の視点を追体験する◆皆川ともえ(かもがわ出版編集部)
2022.09.16 Fri
カテゴリー:著者・編集者からの紹介
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / 本