
イラスト 田中聡美
この10月から後期高齢者医療保険の本人負担率が1割から2割に上がったことに、病院の窓口で気がついてびっくりしたひとたちも多いだろう。いつのまに?そのなかに、介護保険の自己負担率2割への上昇もある。現在介護保険利用者の92%が自己負担率1割だが、「改悪」が起きたら利用者のおよそ9割が2割負担になる。1割から2割といえば負担は倍増だ。1割負担だって重荷に感じる利用者がいるのに、政府は自己負担率を上げることで利用抑制を図っているとしか思えない。社会福祉学の専門家、結城康博さんは「先の参院選の勝利によって「黄金の3年間」を獲得した政府が、利用者負担増という「本音」をむき出しにした」という。
政府の案は小出しにするので全貌が見えにくい。だが、これまで出したり引っ込めたりしてきた「改悪」案の方向を見ると、方向が見えてくる。長期的には要介護1,2を介護保険からはずして、3以上の重度者に限定する。地域密着型サービスや生活援助も介護保険からはずして総合事業に移す。ケアマネージャーが作成するケアプランを有料化する。この案は3年前に出したが、猛反発をくらって引っ込めた。ケアプランが有料化すれば介護保険利用のハードルが上がる。ケアプランは自分でも作成できるが、改悪に次ぐ改悪を重ねてきた介護保険は複雑怪奇で素人の手に負えない。福祉用具も低価格のものは買い取り制にするとか。レンタルだからこそ、介護度の変化にしたがって機種の変更やメンテナンスをやってもらえる。買い取りなら売りっぱなしになるだろう。
コロナ前に危機感から開催した集会の記録を『介護保険が危ない!』(岩波書店)というブックレットにまとめた。その中で「このままでは在宅(おうち)がだんだん遠くなる」と名言を吐いたのは樋口恵子さんだ。
施設もうかうかしていられない。人手不足を補うために施設の職員配置を3:1から4:1に緩和するという。今だって施設はぎりぎりなのに、これ以上「緩和」したらどうなるのかと職員の悲鳴が聞こえる。
介護保険は今年22歳、生まれてこのかた被虐待児だったと言われる。今回は「史上最悪」の改定である。黙っていると何が起きるかわからない。だからそれを押し戻すために「史上最悪の介護保険改定を許さない!!」連続アクションを企画した。年寄りが黙っている場合じゃない。
史上最悪の介護保険改定を許さない連続アクションの案内はこちら
https://wan.or.jp/article/show/10259#gsc.tab=0
「朝日新聞」10月27日付け北陸版「北陸六味」掲載
朝日新聞社に無断で転載することを禁じる(承諾番号18-5999)
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