編集・発行 公益財団法人日本学術協力財団/2022年1月31日

「社会と学術における男女共同参画の実現を目指して―2030年に向けた課題―」は、男女共同参画社会基本法(1999 年)が 21 世紀日本社会の最重要課題とした男女共同参画を人権・家族・労働・教育・医療・福祉を貫く横断的な重要政策の一つと位置付けて取り組まなければ、未来社会は立ちゆかないとし、内閣府男女共同参画局をはじめとして、すべての省庁及び自治体は、あらゆる法・政策における「ジェンダー視点の主流化」を基本方針として明示した上で、21世紀日本社会が「持続可能なジェンダー平等社会」になるための明確なビジョンを示すべきであると提言する。

「ジェンダーとして考えるべき問題は広範に及び、本叢書で様々な観点で議論されていますが、少なくとも、物理分野の女性比率という点に絞って言えば、社会が長年に亘ってつくってきた、男女の向き・不向きなどの勝手な固定観念が、女性の物理学進出を阻んでいるようなきがします。しかし、このような推測も、きちんと学術的に裏付けるべきだと思います。この叢書で、ジェンダーについて様々な学術的検討の結果が多くの皆様に紹介されています。」(発刊に寄せてp.3)わたしたちの生きる日本社会には、ジェンダーとして考えるべき問題が広範に及んでいるという気づきから第一歩が始まる。

「女性研究者が増えることによって学問を変えたい、学問を通じて社会と世界を変えたいというのがジェンダー研究者の初心だったはずだ」と上野さんは言う。『「男の・男による・男のため」のものであった学問研究に女性が増えることは、学問の男性中心主義andro-centrismを脱中心化し、学問を民主化、・多様化・多元化するためである。ジェンダー研究の目的は学問の、ひいては社会の、文化、経済、政治、意識、慣行の変革である』(p.320)と。

この日本を見つめ直し、よりよく、住みやすい社会に変えたいと願う気持ちと一人ひとりの行動によって変革される。順調に前進あるのみとはいかないけれど、課題を見出し、積極的に関わる。切り拓いていく。

■ 堀 紀美子 ■

人文社会科学とジェンダー (学術会議叢書29)

著者:永瀬 伸子 / 和泉 ちえ / 仲 真紀子 / 青野 篤子 / 森山 由紀子 / 大串 尚代 / 川橋 範子 / 天野 知香

日本学術協力財団( 2022/01/31 )