今年の春は統一地方選がある。国政を変えるのはたいへんだが、地方政治なら変えられるかもしれない。
今から20年前、女性議員を増やす活動を地道に行っていた元地方議員経験者、寺町みどりさんを説得して、『市民派議員になるための本-立候補から再選まで』(学陽書房)を書いてもらった。その帯にこうある。
「仲間がいない? これからふやせばいい。政策がない? 仲間と相談してつくればいい。選挙のことを何も知らない? 従来の選挙の手法は知らないほうがいい。市民型選挙のノウハウがない? 議会のことを知らない? この本を読んでください。」
その後、2004年の大胆な地方自治法改正、13年にネット選挙を解禁した公職選挙法改正を受けて、2014年に『最新版 市民派議員になるための本-あなたが動けば社会が変わる』(寺町みどり・寺町知正著、WAVE出版)を送り出した。
当選するのが目的ではない。当選してからが勝負。4年間で政策を実現し、市民の信頼を得て再選につなげる。質疑の手法から、決算・予算書の見方、侮辱を受けたときの身の守り方まで、こんせつていねいに書いてある。実用書なのだ。4年に1回の統一地方選のたびに、見も知らぬ読者から、著者にあててお礼状が届く、「わたしはこの本で議員になれました」と。気がついたら絶版になっていた。版元にお願いして、キンドル版を出してもらった。
若いひとたちがFIFITYsという団体をつくって20代、30代の立候補者を応援しようとしている。名前のとおり「女性が半分」をめざしている。3割で満足している場合ではない。
子育て支援策などを、当事者のいないところで決めてほしくない。女性政治家が増えない理由に、男性政治家にない理由がある。それは夫や親族など家庭内抵抗勢力があることだ。それなら邪魔立てする者のいない未亡人やシングルマザーの方が立候補しやすい。このご時世、シングルマザーが仕事を求めても非正規雇用が関の山だが、地方議員は4年間の有期雇用とはいえ、非正規労働者よりちょっとはまし。転職先にチャレンジしてみてはどうだろう。
「もしも落選したら?」本書の答えは「タダの市民にはもどれない」。なぜなら、いちど選挙に出た人は「落選中の候補者」で「議員になるかもしれない人」だから。つまり行政からも地域社会からも一目置かれるということだ。悪くないと思う。
「朝日新聞」2月2日付け北陸版「北陸六味」掲載 朝日新聞社に無断で転載することを禁じる(承諾番号18-5999)
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