
団塊世代の2025年問題と介護保険の危機
配偶者にも子どもにも頼らず自分らしい最期を迎えるにはどうすればよいのか、「元祖おひとりさま」の社会学者と介護事業27年の現場のプロが徹底討論。
2025年以降、戦後直後の4年間に生まれた700~800万人ともいわれる団塊世代が後期高齢者になります。団塊世代が後期高齢者となると、「家で独居したい」「子供だましのリクレーションはしたくない」「他人に自分のことを決めてほしくない」という「物を言う」要介護者が増えることが予想されます。
医療・介護の面で社会的な大きな負荷がかかることも予想され、その対策と考えているのか、政府は介護保険制度を改定のたびに改悪してきました。
このままでは「在宅」という名の「放置」、「老後の沙汰も金次第」社会が待っていると立ち上がり、アクションを起こした上野氏・小島氏による、団塊世代、団塊ジュニア、介護職の人たちのより良い未来を考える対談を収録したのが本書です。
本書の前半は、全共闘世代へのアンケート結果を見ながらお二人が意見を交わしているのですが、「要介護になったら誰に観てもらいたいか?」という問いへの男性たちの回答は、上野氏いわく「何考えとんねん!?」なコメントのオンパレードです。「思考停止」「見たくない現実は見ない」男性と「おひとりさまで自分らしく生き、死を迎える」姿勢の女性の対比も本書の読みどころです。
安心して認知症になれる社会、幸せな「在宅ひとり死」ができる社会をめざして、著者らとともに考え行動したくなる一冊です。
上野千鶴子氏「はじめに」より抜粋
介護保険を作ったのは主として団塊世代の官僚や市民である。介護保険の恩恵を、まず親の介護で、次に自分自身の介護で受けるのも団塊世代である。介護保険改悪の結果は団塊世代にふりかかってくる。だが、「制度の持続可能性」の名のもとでのその改悪のしっぺがえしを受けるのは、「高齢者優遇」を批判している当の若い世代でもあるのだ。世代間対立を煽られてそれに乗せられている場合ではない。介護保険があるおかげで、年老いた親を安心してひとりで置いておけるのだし、子ども世代も安心して親から離れていられるのだ。そして将来、あなた自身の老後の安心も介護保険にかかっている。団塊世代は、学生運動や全共闘運動を経験した世代でもある。本書では「全共闘世代」の介護をめぐる意識調査の結果にも触れられているが、そのジェンダー・ギャップも興味深い。かつて社会の不正義に対して闘った彼らは何をしているのか? あの時の義憤や闘志はどこへ消えたのか?
いま、高齢者のあしもとに危機がひたひたと押し寄せている。本書でそれを実感してもらえたらと思う。
◇目次
第1章●団塊世代と「2025年問題」
第2章●「主張する団塊老人」に明日はあるか
第3章●「8050問題」――団塊ジュニアに明日はない!?
第4章●介護保険制度の歴史的意義をかみしめる
第5章●介護保険があらわにした介護の現実
第6章●史上最悪の介護保険改訂を許さない
第7章●「在宅ひとり死」は可能か
第8章●理想の高齢社会は、幸せな「在宅ひとり死」ができること
◆書誌データ
書名 :おひとりさまの逆襲 「物わかりのよい老人」になんかならない
著者 :上野千鶴子・小島美里
頁数 :240頁
刊行日:2023/4/17
出版社: ビジネス社
定価 :1.650円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
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子育て・教育
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