AI社会でバイアスや格差とどう向き合うか
今やAIは、生殖医療をはじめ様々な医療分野で用いられることは珍しくなくなり、ジャーナリズムでもスポーツや株価情報などAIによる定型記事の自動生成が増している。
日常生活では、普段利用する検索エンジンやオンラインショッピングなど、私たちが何らかの選択を下す際にAI技術によって提示された情報を判断材料にすることが増えた。
つまり、AI技術は私たちの嗜好の強化から、意思決定の仕方、ひいては私たちの身体のあり方にまで関与しつつある。このように私たちの生活に意識的・無意識的に浸透するAI技術は、どのような問題を孕み、また可能性を秘めているのだろうか。
こうした問題意識をもとに、本書は、東京大学とソフトバンクの共同研究拠点「Beyond
AI 研究推進機構」内の研究グループ「B’AIグローバル・フォーラム(https://baiforum.jp)」のメンバーが中心となって執筆・編集した論考集である。
B’AIは、私たちの日常生活に浸透しつつあるAIの社会的影響を学際的視点から検討する研究グループで、特にジェンダー平等や社会的マイノリティの権利保障を軸に活動してきた。
AIが再生産・助長しうるジェンダーバイアスや社会格差はすでに数多く指摘されているが、本書は、そうしたAIという最新技術に内在しうる問題について、労働問題や生殖医療、メディア表象など具体的事例を通して論じると同時に、AI技術が差別や格差を是正しうる可能性、さらには今後AIといかに向き合うべきなのか複数の角度から提案している。
このようなAIの様々な姿を知った上で、どのようなAI技術が必要なのか、開発できるのかなど、研究分野や立場を超えて多くの人々が対話に参加できるような環境作りに貢献できればと考えている。
◆書誌データ
書名 :AIから読み解く社会-権力化する最新技術
編集 :東京大学B'AIグローバル・フォーラム,板津木綿子,久野愛
頁数 :328頁
刊行日:2023/3/31
出版社:東京大学出版会
定価 :3520円(税込)
2023.04.26 Wed
カテゴリー:著者・編集者からの紹介