
性暴力を考える
本書は、コロナ禍でより顕在化した性暴力被害者の実態を社会に伝え、性暴力が生じるメカニズムを解明するとともに、性暴力のない社会を目指すために、私たち一人ひとりがどう取り組んでいくべきかについて書かれた本です。
本書の特徴はNHKが2022年の春に性暴力被害者を対象に行った“性暴力”実態調査を元に約3万8,000件あまりのデータを分析していることです。この調査から、もっとも衝撃を受けた被害の年齢が15.1歳と若く、4人に3人は10代での被害であることや、性暴力被害によって心身ともに深刻な影響を受けることが明らかにされています。また、その影響は長く続き、被害から20年経っても、48.7%がPTSD(外的外傷後ストレス障害)の症状に苦しんでいます。
他方、被害について話していない人も多く、また、相談したとしても「たいしたことではない」「よくあることだ」と言われて、多くの被害者が二次被害に遭っています。背後には「男らしさ」「女らしさ」と言った社会的に作られた「規範的男性像」が強く影響しており、このような空気が社会で醸成されているために、被害者に支援が届きにくくなっています。
しかし、近年では勇気を持って声を上げる被害者が後を絶たず、社会の性暴力への関心も高まってきています。刑法の改正も審議されており、「強制性交罪」から「不同意性交罪」へと変わります。
大きな時代の変わり目に、その変化を理解し、誰もが加害者にも傍観者にもならない社会を実現させるために、多くの方に読んでいただきたい1冊です。
◆書誌データ
書名:「助けて」と言える社会へー性暴力と男女不平等社会
著者:大沢真知子
頁数:247頁
刊行日:2023年5月27日
出版社:西日本出版社
定価格:1,800円(税抜)
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