
ジェンダー概念が切り開く、これからのメディア論
本書はジェンダーの視点からメディア論の基礎を学ぶ入門書です。
メディア論の入門書にはすでに多くの良書がありますが、その大半において、ジェンダーに関する章は後半の方に1章だけ設けられるのみで周縁的な扱いにとどまっていました。
しかし「ジェンダー」に着目することは、当たり前で私たちが思考を止めてしまっている事柄を根本から捉え直すことを可能にします。たとえば「表現の自由」や「公共性」といったメディアの理念や、私たちが常に接続しているSNSをジェンダーの視点から考えると、男性中心的、商業主義的であるといった、これまで見落とされてきた側面が浮かび上がります。全章でジェンダーの視点を取り入れることで“新しいメディア論”を提示し、入門書でありながらメディア研究の発展にも寄与する1冊にしたい。そのような思いをもって本書を刊行しました。
本書はまた、メディア論の本ではありますが、ジェンダー、フェミニズムに関心のある読者には必ず新たな発見のある本です。メディアは今や単なる通信や放送、コミュニケーションの手段であることを超えて、私たちの生活の隅々にまで入り込んでいますが、メディアによる表象やSNSの言論空間、メディア産業、メディア文化まで、メディアのあらゆる面にジェンダーの不平等や抑圧が潜んでいます。林香里さんが「男女共同参画社会の実現のためには、制度改革だけでなく、社会の風土改革、つまりメディアの改革が必要」(『足をどかしてくれませんか。』)と述べているように、だれもがジェンダー規範から自由で生きやすい社会を作るためには、メディア全体をジェンダーの視点から見直すことが必要なのです。
編者はジャーナリズム/メディア研究がご専門で、「ケアのジャーナリズム」を提示されている林香里さんと、ジェンダーとフェミニズムの視点からメディア文化について研究されている田中東子さん。メディアの思想、インターネット空間、マスメディアとジャーナリズム、メディア文化の4部構成で主要分野を網羅していますので、ぜひ興味のあるテーマからページをめくってみてください。また、各部のテーマをより身近な視点から考えられるようコラムを入れています。軽やかな文体で問題の本質をつくコラムもお楽しみください。
【目次】
序章 ジェンダーの視点からメディア論を学ぶ(田中東子)
◆第Ⅰ部 メディアの思想とジェンダー
1 表現の自由――なぜフェミニズムの議論は表現の自由と緊張関係を持つのか(小宮友根)
2 メディアと公共性――「公共性」未満を押し付けられてきた女性たち(林 香里)
3 メディアと表象の権力――日常を通じたジェンダーの生産(田中東子)
◆第Ⅱ部 インターネット空間とジェンダー
4 SNSと政治――デジタル時代の民主主義(李 美淑)
5 巨大IT産業――テクノロジーに潜むジェンダー・バイアス(阿部 潔)
6 消費文化とブランド化――ジェンダーを再階層化するランク社会(田中東子)
◆第Ⅲ部 マスメディア、ジャーナリズムとジェンダー
7 マスメディア――新聞社・放送局の歴史に見るオトコ(会社)同士の絆(北出真紀恵)
8 ニュースとは――報道が描く女性像(四方由美)
9 メディアを使う――オーディエンス論から考えるジェンダー・ステレオタイプの影響(有馬明恵)
◆第Ⅳ部 メディア文化とジェンダー
10 サブカルチャー論――女性の抵抗文化とエンパワメントの循環(川端浩平)
11 ファンカルチャー論――韓流ブームにみる女性たちのエンパワメント(吉光正絵)
12 セクシュアリティとメディア――表象と性をめぐる規範(堀あきこ)
13 エスニシティとメディア――ジェンダーとエスニシティが交わる「インターセクショナリティ」から考える(林 怡蕿)
終章 情報化社会とジェンダーの未来(林 香里)
◆コラム
1 「ここはこうやろ!」を変える(武田砂鉄)
2 #KuToo以降のSNSとの闘い(石川優実)
3 「女子アナ」がいなくなる日(小島慶子)
4 メディア・コンテンツに見る性的マイノリティへの蔑視(松岡宗嗣)
◆書誌データ
書名 :『ジェンダー概念が切り開く、これからのメディア論』
著者 :林香里・田中東子編
頁数 :264頁
刊行日:2023/3/20
出版社:世界思想社
定価 :2310円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
脱原発
女性政策
憲法・平和
高齢社会
子育て・教育
性表現
LGBT
最終講義
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