
「LGBT理解増進法」成立の今、ぜひ読んでほしい
LGBTQ当事者やアライ(支援者)が抗議する中、6月16日、「LGBT理解増進法」が参議院本会議で可決・成立しました。与党案に日本維新の会などの主張を盛り込んだもので、「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ」「全ての国民が安心して生活することができるよう留意する」と、LGBTQ当事者を犯罪者のように扱っています。
これに対して、本書の編者である「LGBT法連合会」は、ただちに「私たちが求めてきた差別禁止法とは大きく異なり、懸念を表明しなければならないものであることは極めて残念である」との声明を出しました(声明全文を本書巻末に所収)。
この法律には前史があります。LGBTQ差別をなくしてほしいと、法整備を求める当事者団体の連合体「LGBT法連合会」が2015年につくられました。超党派の国会議員による「LGBTに関する課題を考える議員連盟」(略称LGBT議連、会長は自民党議員)もでき、これらを中心に法整備の動きが具体化し、2021年には「LGBT理解増進法」の国会上程が目指されました。これは今回成立した法律と同じ名前ですが、当事者も「辛うじて評価のできる内容」にすり合わせたものでした。しかし、宗教右派や保守的政治勢力の猛烈な阻止運動で、国会への上程は見送られたのです。
岸田政権が法案を再登場させて、秘書の差別発言をうやむやにし、G7に向け体裁を取り繕うというあからさまな動機の中で、自分たちの都合のよいように改変して成立させたのが、今回の法律です。
なぜLGBTQ当事者は差別禁止法を求めるのか、なぜ「LGBT理解増進法」の国会上程が2021年に見送られたのか、法整備を妨げる動きはどんなものかを分かりやすくまとめたものが本書です。編集作業は、国会での動きと同時並行で進んでいて、採決の直前にいったんは校了しましたが、法の成立を受けて急遽内容をアップデートし、なぜこのような法律が成立するに至ったのかが分かるようにしました。結果として、法成立までのドキュメンタリー的な本となりました。国会の様子を見ていても「よく分からない」と思っている方、ぜひ読んでみてください。
また、本書では、一橋大学でのアウティング事件、女子大学におけるトランスジェンダー女性の出願資格問題、LGBTQ報道ガイドライン、宗教界(仏教、キリスト教)ではセクシュアル・マイノリティの問題がどう扱われてきたかなど、多角的な話題を提供しています。
トランスジェンダー・バッシングについては、太田啓子さん、北仲千里さん、三成美保さん(本サイトで呼びかけられている「LGBTQ+への差別・憎悪に抗議するフェミニストからの緊急声明」の呼びかけ人)、本サイトでこの問題について発言している遠藤まめたさんが、詳しく展開しています。
(八木絹 フリーライター・編集者、戸倉書院代表)
◆書誌データ
書名 :SOGIをめぐる法整備はいま――LGBTQが直面する法的な現状と課題
著者 :LGBT法連合会(編)
頁数 :160ページ頁
刊行日:2023/7/19
出版社:かもがわ出版
定価 :1980円(税込)
慰安婦
貧困・福祉
DV・性暴力・ハラスメント
非婚・結婚・離婚
セクシュアリティ
くらし・生活
身体・健康
リプロ・ヘルス
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高齢社会
子育て・教育
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LGBT
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