
https://www.dipex-j.org/med-care-child/ より
医療的ケア児を知っていますか。
ニュース、報道などで耳にしたことがある方も多いと思います。
日常生活において、人工呼吸器や胃ろう、気管切開によるたんの吸引など、なんらかの医療的ケアの必要な子どものことを言います。日本全国で、現在2万人ほどの医療的ケア児がいると言われています。
NPO法人健康と病いの語りディペックス・ジャパンは、2023年7月、医療的ケア児を現在育てている、あるいは育てていた経験をもつ30代から50代のご家族42名(母親34名・父親8名)のインタビューを収録したウェブページを公開しました。
こちら↓
https://www.dipex-j.org/med-care-child/。
トピックは、子どもの病気や障害、医療的ケアが必要なことを受け止めるまでの葛藤、医療的ケアを在宅で実施することによる日々の緊張感、保育園や学校での付き添いによる母親の就労困難、将来の子どもの居場所の確保など多岐に渡ります。2021年6月には、国会で医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)が成立するなど、社会的にも医療的ケア児と家族への支援が注目を集めるものの、実際には当事者の個別の困りごとには行政や支援者の手がまだ十分行き届いていない状況があります。
ジェンダー研究の視点からみると医療的ケア児の家族が語る日常から、その問題の根深さを知ることができます。
「障害があってもなくても、子育てはお母さんの仕事ですよ」
「お子さんだって、お母さんと一緒が幸せでしょう」
そんな“子ども思いの親切な”アドバイスによって、就労の継続を断念し、支援を受けられずに孤独な状況で、毎日の子どものケアに向き合う母親は少なくありません。
語りの中では、NICU(新生児集中治療室)でたくさんの管につながれたわが子と対面したときの受け入れがたい気持ち、小児科病棟で狭いベッドに横になり、食べること寝ることトイレに行くことすらままならない付き添い生活を送るつらさ、仕事と育児の両立を思い描いていたのに、毎日のケアを理由に仕事をあきらめざるを得なくなったという無念。たくさんの苦しい経験が語られると同時に、障害をもつ子どもを育てたからこそ、これまでとは全く別の新たな世界が開けたという感謝の気持ち、子どもの笑顔で満たされる生活の楽しさ、ゆっくりした発達の中でも感じられる子どもの成長の喜びといった、充実した子育ての日々も語られています。
(夫と)同じ会社だったから想像がつくんですよね。仕事終わってからお酒飲んで、面倒見ないといけない子どももいなくて。でも、「俺は今、子どもが大変で気を遣ってるんだよね」って、いいお父さんぶってるけど、実際してないじゃん。この生活をたった1日するだけなのと、ずっとし続けるのとでは大違いなんですけどって。
でも、娘を理解できるのって、私たち(夫婦)しかいないんですよ。こんなことができて、「わー、うれしい」って思って(私と一緒に)喜べる人って、あ、主人しかいないっていう。
関西在住・40代母・(15歳の長女が胃ろう)
「語り」によって、医療的ケア児を育てる中での困りごとを知ってもらうことはもちろん、子育て中の親に共通する思いを感じることができます。医療的ケアのある子どもとその家族が安心して毎日を過ごせる社会の実現にむけ、是非、語りの中にある当事者の思いを知っていただきたいと思っています。

2023年9月2日(土)には、東京・築地にある聖路加国際大学にて、公開記念シンポジウム「医療的ケア児の学びと卒後の居場所~成長への家族の思い」を対面とオンラインのハイブリットにて行います https://wan.or.jp/calendar/detail/7223 。
こちらもお時間が許す限り、ご参加いただければ幸いです。
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