
「史上最悪?!」とは尋常ではない。
2024年度に7回目の改定を迎える介護保険は「ガマンの限度を超えたというか、放っておけないレベルに達した」と上野さんは言う。
高齢者の介護を、社会全体で支える制度として2000年に産声を上げた介護保険は、そもそもこれまで3年に一度改定されるたびに改悪に改悪を重ねてきたのだ。
2020年、本書とおなじく岩波書店から『介護保険が危ない!』(岩波ブックレット 上野千鶴子・樋口恵子)が発行され、そこですでに危機に面している現状が語られている。しかしながら、今回の改定は「危ない」を超え「使えなくなる!!」のレベルなのだと言う。
人生100年時代。少子高齢社会。おひとりさまで病気になっても在宅で安心して暮らせる老後に介護保険制度は必要なのだ。介護保険は宝。どうにかその宝、守りとおしたい。
『人間社会はケア社会です。(中略)ケアは人間らしさの象徴だと思います。このところ政府は「ワーク・ライフ・バランス」を言うようになりました。ワーク中心でありすぎた社会への反省があるのだと思いますが、私としては、そこに「ケア」を加えて「ワーク・ライフ・ケア・バランス」こそが必要だと言いたい。』(おわりにp.107)と樋口恵子さんは言う。
若い人も高齢者も、ケアを受ける人もケアする人も、女も男も、それぞれの人としての暮らしが安全安心で守られる「ケア社会」の本質を考え、見通しがきく持続可能で柔軟な社会を、必要なケアにできるだけ簡単にアクセスできる使い勝手の良さが優先される制度を守りたい。
「権利と制度は黙って向こうから歩いてこない。要求しないと得られない。(中略)手に入れたと思ったものさえ、知らないうちに足元から掘り崩されていく。監視し、参加し、闘い続けなければ、今あるものを守ることすらできない。」と上野さんは言う。
ここにケアの専門家たちの現場の声が集結している。この本を手に取り、ひとりひとりの「ワーク・ライフ・ケア・バランス」を知ることが、あなたとあなたの大切な人を守ることにつながっていく。
■ 堀 紀美子 ■
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