2012.01.27 Fri
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 隠棲したお爺さんが悠々書いたと思われがちな「徒然草」が、 じつは兼好がまだ煩悩むんむんの頃に書かれた、 とても生々しい随筆集だということをご存知ですか。
武士が台頭する鎌倉時代に貴族として生れた兼好法師は、清少納言の「枕草子」を読むたびに「オレも平安時代に生れていれば!」と身悶える男でした。
彼はその鬱屈を紙面にぶつけ、稀代の名著が誕生。
酒井さんは同じ随筆家(エッセイスト)の目で「徒然草」を読み、書かれたことと書かれなかったことの裏に潜む作者の心理を、怜悧な外科医のごとく鮮やかに裸にしていきます。
シンプルなテキストにこれほどの情報が、自意識が詰まっているのかと、読者は驚かれることでしょう。
絶妙で爆笑必至の現代語訳によって描き出された兼好の姿は、「人は~すべき」「~しないヤツは馬鹿だ」と上から目線で理想論をツイートする現代の中年男性に驚くほど似ています。
ザ・男とも言うべきこんな人を前にしたら、揶揄したりツッコミを入れたりしたくなるのが読者(特に女性)というもの。その衝動を知り尽くした酒井さんは、兼好の対談相手に清少納言を登場させ、彼が涙目になるまで追及の手を緩めません。
ザ・男VSザ・女の、時代を超越した論戦は必読です。
いるかいないか解らない読者に向かって「私は何者なのか」を発信し続けた兼好。そのメッセージを700年後の私たちがキャッチし、いま生きている人に対するのと同じように笑ったり、ムカッとしたり、共感したりできる不思議体験を本書でご堪能ください。(編集者 小林由紀)
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