女の本屋

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たたかう老婆たちとケアの絆 『デンデラ』佐藤友哉

2012.03.14 Wed

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.「村」の掟によれば、七十歳を迎えると老人たちは雪に埋もれた「お山」に捨てられ、そこで「極楽往生」を遂げる。ところがその掟に背いて、三十年前にひとりの老婆が生き延び、隠れ里「デンデラ」を作り上げた。いまやそこには五十人の老婆が暮らす。

そこは貧しい村よりもさらに食糧に乏しいが、しかしそこでは誰も棄てられたり飢えたりはしない。なぜなら、デンデラでは、力の強い者が富や食べ物を独り占めしたり、働けない者を邪魔者扱いしたりするのはご法度だから。デンデラは、皆がそれぞれに尊重されて生きていける、女同士のケアの絆が実践されるところなのだ。

年取って村からお山に捨てられるのは男女を問わないが、デンデラが老婆だけの地であるのには訳がある。デンデラはお山に捨てられた村の老人を助けに行くのだが、救うのは女だけなのだ。デンデラの長老メイは高らかに言う、「男なんざ絶対に入れんよ!『デンデラ』は女だけのものだ!ざまあみろ」。村の貧しさ生活の厳しさは、自然の条件じゃない、男たちの支配のせいなんだ、それに気づいた老婆たち。

老婆たちは、村へのリベンジのために襲撃を計画、武闘訓練に余念がない。ようやく時満ち準備が整ったそのとき、巨大なヒグマがデンデラを襲う。そこから始まる熊とのすざましいバトル、デンデラはいかにヒグマを倒し村にリベンジするのか、、、。

民話譚と戦闘ゲームをミックスしたようなファンタジー。でも、セクシズム(性差別)とエイジズム(年齢差別)とたたかう老婆たちのありようは、決しておとぎ話には聞こえない。それは、私たちの社会に確かにある、女性や高齢者、貧しいものを貶めてきた現実をしっかりと捉える視点がこの小説にあるからだろう。

なでしこジャパンの活躍が「やまとなでしこ」の意味を「従順に耐える女」から「挑戦する女」に変えたように(Ⓒ上野千鶴子さん http://wan.or.jp/ueno/?p=1277 )、『デンデラ』も、「老婆」という言葉の意味を、たくましく生きる知恵と経験豊かな女たち、と変えてくれるかも。

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DVDでは、メイを演ずる草笛光子さんがとりわけ出色。他にも浅丘ルリ子さん、山本陽子さん、倍賞美津子さんなど、かつて「美貌」で売っていた女優さんたちが多数登場、以前とは一味違う、人間的深さがにじみ出ています。(eureka)








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タグ:高齢社会 / / ケア / 老婆 / 老後