
2023年12月25日受講レポート 大須賀あい
研究が進まない。そんな人もいる。「進まない」のではなく、「進められない」と書いたほうが正しいかもしれない。それはまさに私を指しており、決して自慢できることではないが、事実なので隠すこともない。あまりにプライベートな事象が絡んでいるので進まない理由の明言は避けるが、講義の終了が足音をたて近づいてくるこの季節に、「ほとんど、何も進んでいない奴もいる」と書けば、これを読むどこかの誰かに、少し安心してもらえるだろうか。
受講スタートから9ヵ月も経てば、それぞれの歩みに差が出てくる。怒涛の勢いで書き進めている人、問いの再設定に悩んでいる人、目次を幾度も再提出する人、そして私のように研究材料が目の前に用意できているにも関わらず手を付けられていない人。人の数だけ研究があれば、その人生背景もさまざまで、全員が足並みを揃えるには難しい時期に突入している。おそらく私が一番焦っているが、焦燥感の種類もさまざまだ。現役大学院生で修論や博論を提出するものは、命がかかっているといっても過言ではない。追い込まれる。泣きたくなる。逃げ出したいと思う。しかし、不思議なのだ。私も含め、皆、逃げないのだ。オンライン開催の講義ではあるが、受講生に2つの共通点を見つけたように思う。それは、「戦える負けず嫌い」集団だということ。そしてもうひとつは、「最上級に上野千鶴子を愛している」集団だということ。異論は受け付けよう。でも、おそらく、私の読みは合っている。
また、ここ数カ月で、うえの先生の笑いが増えたように思う。声を上げて笑うその様子は、受講生から、うえの先生の域を超えた考察が飛び出したときにやってくる。うえの先生からの誉め言葉は、「すごい」でも「素晴らしい」でもない。「おもしろい」だ。上野千鶴子に「おもしろい」と言わせた受講生は、きっと心の中でガッツポーズをしているだろう。もちろん皆、自分のために論文を書いているが、世紀の社会学者から「おもしろい」と言ってもらうほど嬉しいことはない。
年明けは、サンプルチャプターを通過したものからオーラルプレゼンテーションに入る。うえの先生から、どれだけの「おもしろい」が聞けるだろうか。「研究は逃げませんからね」と優しく背中を押されながら、私も早く「おもしろい」と声をかけてもらいたい。言葉ひとつの効果はすごいものだ。ただその一言で、人は抱きしめられる。個人的には笑っていられない状況だし、途端に安っぽく聞こえるかもしれないが、敢えて書く。強く進もうと思う。まだ朧気な春に向かって。
wan AC 2023年12月26日 受講レポート
高橋ライチ
年末である。しかも私は月初にインフルエンザにやられ、ただでさえ遅れている研究に手をつけられず、今月講評をいただくチャンスを逃してしまった。
そんな状況で12月の2日間の授業を受けた。
研究を進めている仲間の発表がまぶしい。それに詳細なコメントをつけ、論文がよりよくなる方へ押し上げる仲間の鋭さとあたたかさに見とれる。関心領域も背景も異なるメンバーだからこその愛ある突っ込みで、視点が3Dになっていく。さらに上野先生のコメントで、研究の軸が明らかになったり説得力が増していく。
それぞれの人の切実な疑問や憤りなどから生まれた研究が、かたちになっていくさまは希望である。そんな中にあってひたすらメモをとり必死でついていこうとする私。こんな理解度で果たして自分は何かを完成できるのだろうか?
授業後は、メーリングリストに次々受講生のコメントペーパーが届く。ありがたいことに上野先生がさらに補足の返信をくださったりする。その中に、私の心に響いた一節がある。
「大丈夫、データは逃げませんし、研究は待ってくれます。他の人の背を見て学ぶよい機会です。」私以外の、進捗が遅れている受講生へのコメントだけれど、まさに私のモヤモヤした不安や自信のなさを払拭し、地に足をつけることを助けてくれた。
前を人が歩いていてくれるから、歩きやすい。私にとって初めて行く道だから、そのことがありがたい。「研究」のプロセスを、リアルタイムで毎月見せてもらいながら学んでいるんだ。先人研究者たちも、こうして生活の中でぶち当たってきた疑問や憤りを、解き明かそうとしてきた。その成果(先行研究、理論枠組み)を借りて、私もさらに先へと歩を進める。前を歩いてくれている仲間に感謝。ひとりひとりの足元を照らしながら、あなたの行きたい先にはこんなのがあるんじゃないの?と的確に示してくださる、上野先生に感謝。この場に参加できているうちに、迷っても転んでも、遅くても、歩くのだ。
第十回レポート https://wan.or.jp/article/show/11047
第八回レポート https://wan.or.jp/article/show/10950
第七回レポート https://wan.or.jp/article/show/10897
第六回レポート https://wan.or.jp/article/show/10842
第五回レポート https://wan.or.jp/article/show/10810
方法論ゼミレポート https://wan.or.jp/article/show/10802
第四回レポート https://wan.or.jp/article/show/10754
第三回レポート https://wan.or.jp/article/show/10714
第二回レポート https://wan.or.jp/article/show/10645
第一回レポート https://wan.or.jp/article/show/10703
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