
ひょんな事から、東日本大震災で亡くなった外国人の総数を日本政府は把握していないことを知った三浦さん。
せめて彼らの生前の姿を知ることができたら……と、関係者たちを訪ね歩きます。
取材の一環として、著者は東日本大震災での被災地における外国人コミュニティーについての研究をしている、東北大学男女共同参画推進センターの李善姫氏を尋ねます。
著者は彼女から「海外から東北へ結婚移住してきた女性たちは震災前、地域に馴染むために通称名を使い自らのアイデンティティを隠していた。そのため、被災した後は外国人であることを配慮されず、極めて弱い立場におかれた」ということ、「被災地における配偶者と外国人居住者は年齢差が大きく、妻の側が家計を支えている家庭も多く、被災後、移住女性が仕事を失い、家族が崩壊に追いやれたケースもある」といったことを知ります。
本書では、こうした事実のみならず、様々な理由から日本に来て、津波で亡くなった方々の「生きていた姿」を丁寧に描きます。
大好きな日本で過ごす喜びを、アメリカの恩師にメールで伝えた青年、
「米国と日本の架け橋になりたい」と夢を語った女性、
そして、3人のわが子を喪った苦しみの先に希望を見出した木工作家――
そこには、外国人と日本人の間の友情や愛情も多く含まれています。東日本大震災から13年を迎える今、ぜひお読みいただきたい1冊です。
◆書誌データ
書名 :涙にも国籍はあるのでしょうか 津波で亡くなった外国人をたどって
著者 :三浦英之
頁数 :192頁
刊行日:2024/2/21
出版社:新潮社
定価 :1925円(税込)
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