空気を読まない女たちがマジで議論した『青鞜』編集部の日々を描く二兎社公演、『私たちは何も知らない』(2019年初演)の配信が始まりました!
(2024年1月12日から2025年1月12日まで)
日本の報道現場の萎縮・忖度・自己規制に鋭く切り込んだ『空気』シリーズで話題を集めた永井愛の作・演出による瑞々しい青春群像劇です。
芝居の冒頭、若い女性の声でラップが聞こえてくる。耳を澄ますと、
「元始、女性は実に太陽であった、真正の人であった……」
と歌っている。そう、これは平塚明(らいてう)が日本で初めての女性だけの文芸誌『青鞜』創刊にあたって書いた発刊の辞である。らいてうの言葉はラップとの相性抜群でノリがいい。そして、明治~大正期を舞台にしているにもかかわらず、登場する娘たちは皆、現代の服装だ。彼女たちが時代の壁を一気に飛び越え、観客のすぐそばまで来てくれたような感覚になる。
活躍するのは女性解放運動の先駆者として知られる平塚明(らいてう)や、後にらいてうから『青鞜』を引き継ぐ伊藤野枝ばかりではない。名前を残した人もそうでない人も、『青鞜』編集部に出入りしていた十代から二十代の女たちは、みなアクが強く、個性的で、自己主張が強いのだ。
家父長制に異議を唱えて激しいバッシングにあったり、同性どうしの恋や年下の男性との事実婚がゴシップネタとして大きく取り上げられたりと、彼女たちの前にたちはだかる困難は、時代を現代に置き換えてもそのまま通用しそうである。
それでも、今よりはるかに女性の地位が低かった時代に、特別な後ろ盾もない普通の娘や主婦が、堂々と自分の意見を述べ、社会に対して主体的に発信する姿に圧倒される。そんな彼女たちの生き方は、何かと“空気”を読み、言いたいことがあっても自己規制してしまう現代日本の私たちの背中を押してくれるのではないだろうか。
本作品では、何が『青鞜』をこれほどまでに特別な雑誌にしたのか、そして、『青鞜』の女たちが本当に目指していたものは何だったのかを独自の視点で探る、異色のフェミニズム演劇である。
作・演出:永井 愛
出演:朝倉あき 藤野涼子 大西礼芳 夏子 富山えり子 須藤蓮 枝元萌
視聴料:2200円(税込)
配信プラットフォーム:カンフェティストリーミングシアター
http://confetti-web.com/nitosha43_streaming