行政と医療の壁に突き当たっている日本のリプロダクティブ・ヘルスケア。二〇二三年の春、念願の経口中絶薬が承認されたにもかかわらず、高額な料金、配偶者同意、入院要件など、あまりにも高いハードルが導入されてしまいました。

同年冬には、「緊急避妊薬の薬局販売」の試行にようやくこぎつけたものの、ふたを開けてみれば、やはり高額な料金設定で、未成年の少女たちには親の同伴というハードルが課されてしまった。そして経口中絶薬と緊急避妊薬のどちらも取り扱い医療機関があまりに少なく、必要とする女性たちの手に届きにくいものになっています。

中絶薬や緊急避妊薬を切望してきた日本の女性たちは、そうした事態のなりゆきに愕然とし、失望のさなかにおかれています。揺らぐことなき信念をもって行動に移した女たちを丹念に描いた『ジェーンの物語』は、今こそ必要とされているはずだと強く感じています。

ミニコミ図書館でも公開されている「からだ・私たち自身」が登場したり、公民権運動や反戦運動との交差性にも触れられており、大統領選に伴って動くアメリカでの中絶の権利に関わる闘いを振り返る本にもなるかと思います。

ぜひ広く読んで頂けたらと思います。



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妊娠して困ってない? <ジェーン>に電話して!

中絶が違法だった半世紀前の米国シカゴ。
女たちが女たちを助けようと立ち上がった違法の地下組織〈ジェーン〉。安全な人工妊娠中絶を求め駆け込んだ女性たちの数は推定1万1000人。激動の歴史を赤裸々に描いた衝撃的なノンフィクション。



私たちはごく平凡な女たちだった

1960年代末から、1973年に最初の合法的な中絶クリニックが開設されるまで米シカゴで活動した地下組織〈ジェーン〉。当初はカウンセリングと中絶施術者の紹介を行っていたが、自分たちで中絶方法の技術を学び、推定1万1000人の女性に安全な人工妊娠中絶を提供した。多くの人々を救うと同時に、女性の権利に関する社会的な議論を巻き起こした。


「願っていたのは、この歴史を読むすべての人が私たちの中に自分自身を見いだし、「私もこうしていたかもしれない」と思ってくれること」(本文より)


個人的な回想と、〈ジェーン〉のメンバーや依頼者、中絶を行った医師たちへのインタビューをもとに、この急進的なグループの詳細な歴史をみごとに描いている……女性史におけるドラマチックで重要な作品である。

―パブリッシャーズ・ウィークリー誌


『ジェーンの物語』は、女性が自らの物語を語ることを求めるフェミニズムの理論と歩調を合わせた女性史の一部である。女性の権利運動において、重要でありながら見過ごされがちな瞬間を人々に思い出させる役割を果たしている。

—シアトル・ウィークリー誌



全国の書店で4月下旬発売予定。



【著者プロフィール】
ローラ・カプラン(Laura Kaplan)

米シカゴの伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織「ジェーン」のメンバーで、シカゴのエマ・ゴールドマン女性健康センターの創設メンバー。ナショナル・ウィメンズ・ヘルス・ネットワークの理事を務めていたこともあり、様々なコミュニティー・プロジェクトに携わっている。



【翻訳者プロフィール】
塚原久美(つかはら・くみ)

中絶問題研究家、公認心理師、中絶ケアカウンセラー、RHRリテラシー研究所代表。著書『日本の中絶』、『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』(勁草書房:山川菊栄賞、ジェンダー法学会西尾学術賞)、訳書『中絶がわかる本』など。日本人のリプロの環境を改善することがライフワーク。


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書籍情報

『ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織』
ローラ・カプラン
塚原久美訳

四六判、並製、376ページ
定価:本体2,500円+税

ISBN978-4-86385-623-3 C0098

装幀 緒方修一

書肆侃侃房から、2024年4月下旬刊行予定