第2期WANフェミニズム入門塾の第11回講座が2024年6月27日(木)に開催されました。
今回のテーマは「フェミニズム文学批評」。講座生が自身の言葉で書き上げたレポートで、
当日の講座の様子が少しでもみなさんに伝わればと思います。
今回は、講座中に上野千鶴子さんの呼びかけで講座生が挙げてくださった、それぞれが好きな
作家さんのお名前も載せておきます。
第11回 フェミニズム文学批評 受講レポート みもざ
ムカツク、何これ?!と思って、私もしばらく小説を読むのがイヤになっていた。
こんなジェンダーまみれのモノを浴びせられるなんてまっぴら、という気持ちだったのだ。
講座の中でも皆さんから、落語や歌舞伎が気に入らない、Jポップの歌詞が気持ち悪い、
という意見が出されて共有できました。
そして、なによりフェミニズム文学批評はこの違和感こそが大切。
従来の権威を疑い、なぜ腹が立つのかを分析することは、私が今、生きることに繋がっていくんだと思います。
今回の動画や本の内容には本当にワクワク、もっと早く知っとけば、教室で(例えば『こころ』の授業で)
もう少しマシな事が言えたのに(作品や主人公をけなして的確に罵倒できたのに)、と勉強不足を後悔。
以下、印象に残った箇所です。
女が男に依存させられるなかでエロス(=全生命力のふれあい)は成立しない。〈恋愛はそりゃ無理だ〉
夏目漱石が男と女の関係の歪みに気づいたのは平塚らいてうの「青鞜」運動が作用していた。
〈『明暗』が未完なのが残念〉
近代日本男性文学は「なりそこね家長文学」。〈あー『山月記』もそうだよね〉
女への逃走と女からの逃走。〈男性作家たちってオロオロ弱くて面白い〉
「文学」も、女の作ってきた書物を評価の対象にしない「定義の政治」があった。
〈昔からずーっと男たちが審判してきたんだ〉
中国へのコンプレックスから漢詩文をわざと忘却した。〈なんと、そうだったのか・・・絶句〉
今は小説をたくさん読みたくなってきました。
が、最近の小説も漫画も映画も、私は知らなさすぎて情けないです。
まずは、10分レポート発表者の方が「私が読む日本平成後女性作家」でまとめられていた3つの小説、
中でも特に上野さんが「産むこと生まれることについて考え続けるのは、なぜ女ばかりなのか」
と書評を寄せられていた、川上未映子さんの『夏物語』を早く読もうと思う。
〈以前、このレポートで紹介されていた『82年生まれ、キム・ジヨン』は読みました。
ノンフィクションのような小説で衝撃的!〉
また、古い文学ももう一度読み直したいと思う。
なんと言っても『源氏物語』。(NHK大河ドラマも面白い)
大塚ひかりさんの『源氏物語の幸福感』ももっと早く読んでおけばよかった、
古典の授業で光源氏も薫の君もボロクソに言えたのに。
そういえば駒尺喜美さんの『紫式部のメッセージ』も、たしか買ったはずと、押し入れから見つけ出し読み返した。
駒尺さんははっきりと、紫式部は一千年前のフェミニスト、男女の構造差別や男性中心社会への反発を
記している、と指摘されています。
昔読んでたはずなのに、ちゃんと理解しておけば授業で・・・・・・(以下略)。
講座の中で発言しましたが、私が以前調べていた「国語教科書のジェンダーチェック」を思い出したのは、
「表現の現場調査団」の報告を見たからでした。
改めて気になり古いUSBを探し、16年前の2008年に集めた資料と、現在の教科書出版社のHPをザッと見て
比較してみました。
教科書の種類自体が変わってるので、同じ高一程度のものを比べてみると、2008年「国語総合」の
女性作者の割合は平均20.1%、2024年「現代の国語」・「言語文化」の割合は平均22.2%。
2ポイント上昇で、少しよくなったかな? でもあんまり変化なし、という感じ。
ただそんな中でも、T社が中村桃子「ことばがつくる女と男」、川島慶子「変貌する聖女」、
尹雄大「男の絆、女たちの沈黙」など、ジェンダー論を積極的に取り上げているのが注目でした。
さて、ひとつムカつくことがあったので紹介します。
実はHPで「筆者のジェンダーバランスに配慮しました」と明記している教科書が2冊あるのを発見しました。
D出版社です。
ところがこの教科書、一冊は作者16人中、女性は2人で女性割合12.5%。
もう一冊は作者18人中、女性は3人で16.7%。
なんでこれが配慮していると言えるのか! 間違いなのか?と思い、すぐにD出版社に電話しました。
すると担当者は「配慮しているんですが・・・お恥ずかしい限りで・・・モゴモゴ・・・」。
D社の教科書は2008年も女性割合は平均して14.7%で、ほとんど変わっていないのです。
他社の方がもっと女性割合が高くなっているのに。
ということで、今後D出版社の教科書がどうなっていくか注視しようと思います。
ふだん本も新聞も読まない高校生が、唯一読む文章が教科書だとしたら、ジェンダーバランスは大事ですよね。
女性の作品だから良いというわけではないし、男性執筆のジェンダー視点の内容の文章もあるので、
あくまで目安ですが、まだまだ違和感を突きつける必要があるのは確かです。
【講座生の好きな作家一覧】 ※五十音順
青山 七恵 (あおやま ななえ)
あさの あつこ (あさの あつこ)
今村 夏子 (いまむら なつこ)
植本 一子 (うえもと いちこ)
王谷 晶 (おうたに あきら)
恩田 陸 (おんだ りく)
桐野 夏生 (きりの なつお)
宮藤 官九郎 (くどう かんくろう)
小林 エリカ (こばやし えりか)
白岩 玄 (しらいわ げん)
多和田 葉子 (たわだ ようこ)
はらだ 有彩 (はらだ ありさ)
平岩 弓枝 (ひらいわ ゆみえ)
松田 青子 (まつだ あおこ)
三浦 しをん (みうら しをん)
山本 文緒 (やまもと ふみお)
柚木 麻子 (ゆずき あさこ)
☆関連サイト☆
・【選考結果メールを送りました】 WANフェミニズム入門塾 第2期生を募集します!
https://wan.or.jp/article/show/10511
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第1回「リブとフェミニズム」レポート
https://wan.or.jp/article/show/10718
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第2回「フェミニズム理論」レポート
https://wan.or.jp/article/show/10801
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第3回「性役割」レポート
https://wan.or.jp/article/show/10865
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第4回「権力と労働」レポート
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・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第5回「母性」レポート
https://wan.or.jp/article/show/10959
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第6回「セクシュアリティ」レポート
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・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第7回「表現とメディア」レポート
https://wan.or.jp/article/show/11132
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第8回「ジェンダーと教育」レポート
https://wan.or.jp/article/show/11187
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https://wan.or.jp/article/show/11220
・第2期WANフェミニズム入門塾【動画を見て話そう】 第10回「女性史・ジェンダー史」レポート
https://wan.or.jp/article/show/11312
2024.07.15 Mon
カテゴリー:新編「日本のフェミニズム」
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