
<てるてる Reading Circleとは?>
2012 年に女性学(「女性の女性のための女性による学問」)の第一人者である故井上輝子先生が和光大学を定年退職後「木曜研究会 」をスタート。2014年度に「GF読書会」と名称変更し、WANサイトの女性学講座コーナーに半期ごとの活動報告を掲載。2021年に井上先生が逝去された後は「てるてるReading Circle」として、オンラインで活動中。メンバーはさまざまなバックグラウンドの 30 ~ 70 代の女性たち。現在新メンバーを募集中。ご連絡はこちらまで:teruterurc@gmail.com
<書籍紹介>
「幻の目次」が書かれた本を読んだのは初めてだった。本書では、明治維新後150年の日本のフェミニズムの歴史が4期に分けて整理されている。時期区分を横軸に、フェミニズムの問題領域を縦軸に置き、各時代で様々な論点がどのように扱われ、フェミニストたちがいかに闘ってきたかを総覧できる仕組みになっている。しかしこの取り組みは、著者の急逝により、第二派フェミニズム(1970年〜)以降の記述が「未完」となった。
Part1に収められた1868年〜1970年までの通史には、大勢の女性たちの名前が登場する。それは巻末の「人名索引」からも分かるが、これまでの「歴史」の中からいかに女性たちが締め出され、不可視化されてきたかを痛感する。ここでつぶさに紹介される第一派フェミニズム下での論争(貞操論争・母性保護論争・堕胎論争・産児調節論争)や、戦後の主婦論争等の様々な議論は、現代を生きる私たちにとっても全く古びていない。
Part2は、病床でまとめられた断章から始まる。「私にしかできない仕事」として本書を書き、女性史研究の「偏り」やバランスの欠如を指摘する著者による、ウーマン・リブを「中から」見ていた者としての語りは圧巻である。口語調のメモ、研究者としての論考やシンポジウム記録を読めば、Part1の通史と現代的諸問題を接続的に理解することができる。
<読書会を終えて>
井上先生急逝の翌年度(2022年)、半年以上(全21回)をかけて、先生の思いを噛み締めるように各自がレジュメを作成し、丁寧に読書をした。一人で抱えるにはあまりに大きすぎる喪失感を、読書会の仲間と共に分かち合い、先生の言葉を受け止める時間は、グリーフケアとしても機能していたように思う。井上先生は読書会の場づくりについて、本書において「ジェンダーについての知識量や学問的蓄積の多寡にかかわらず、それぞれの参加者が、誰にも気がねせずに、平場で自由に発言し、自分とは異なる意見や感想にも聞く耳をもてる場」【p311】を目指したと書いている。フェミニズムの運動の中で大切にされる「平場の関係」の実践は、正解もゴールもなく、とても難しい。だからこそ諦めずに、先生の思いを引き継ぐ読書会の場をトライ&エラーを繰り返しながらつくっていきたい。
◆書誌データ
書名 :日本のフェミニズム: 150年の人と思想
著者 :井上輝子
頁数 :342頁
刊行日:2021/12/8
出版社:有斐閣
定価 :2420円(税込)
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