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『シネマ・ミリタンと女性映像作家』園山水郷

2013.03.04 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.本書は、1970年代の初めから主にフランスとスイスで活躍してきた映像作家キャロル・ホソプロスの作品を中心に、1970年代初めのフランスでの女性解放運動、とくに避妊と中絶の自由を求めた女たちの闘いと作品とのかかわり、日本でこれまで正式に紹介されてこなかった、シネマ・ミリタンの成り立ちと発展について述べるものである。

キャロル・ホソプロス(1945-2009)は、ドキュメンタリーの一種と見なされている、シネマ・ミリタン(日本語に訳せば闘争的映画とでもいうだろうか)の作家として、また女性映像作家のパイオニアとして常に第一線で活躍してきた作家である。第二次大戦後のフランス解放からアルジェリア戦争へと至るなか、多くの政治映画が制作され始め、それは1968年の5月革命を契機としてさらに発展することになる。

以降、それまでの、フィルムを使った作品とは別に、世の中に登場し始めた新しいメディアであるビデオを使う作品も現れ始めた。キャロル・ホソプロスはパートナーのポールらと共に1969年ビデオグループ「ビデオ・アウト」を作り、以降時代を映し出す作品を作り続けてきた。

例えば「ジャン・ジュネ、アンジェラ・デイビスを語る」は、作家のジャン・ジュネがアメリカの人種差別政治を批判し、アンジェラ・デイビスとブラックパンサーへの支援を呼び掛ける作品だが、もともとテレビ用に行われたインタビューであった映像は検閲の結果放送されず、記録用にホソプロスが撮っていたこの作品が唯一現存する貴重な映像である。「革命的ホモセクシュアル戦線」は1971年、フランスでの、同性愛者による初めてのデモを撮った作品で、「リップ」シリーズは、70年代初めの労働闘争の代名詞とも言える、フランスを代表する時計メーカーのリップ社のストを記録した作品である。

その他、70年代初めの女性解放運動を通しては「スカム・マニフェスト」、「セックスしなきゃいいんじゃない!」、「マゾとミゾは船で行く」など多くの作品が制作された。

本書により、シネマ・ミリタンという、日本ではまだ馴染みがないドキュメンタリーのジャンルで活躍し、かつ女性作家として主に女性の抱える問題に常に向き合ってきたキャロル・ホソプロスについて日本で初めて紹介することを意図するものである。

目次
はじめに
第一章  シネマ・ミリタンの成り立ちと発展
第二章  フェミニズム運動と女性による映画
第三章  70年代のキャロル・ホソプロスの作品
インタビュー キャロル・ホソプロス 「ゆっくり歩こう」(聞き手:エレーヌ・フレカンジェ)
寄稿 ニコル・ブルネーズ 「政治映画の巨匠 キャロル・ホソプロス」
寄稿 エレーヌ・フレカンジェ 「フェミニストがビデオを持った時」
引用映像作品一覧
あとがき   (著者 園山水郷)








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タグ:映画 / / フェミニズム / 差別