2014.07.18 Fri
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 学問分野における男女共同参画は、必ずしもジェンダー研究とは親和性が高くない。これは、2014年5月31日に日本学術会議で開催された「男女共同参画は学問を変えるか」シンポジウムの出発点となった基本認識だ。
歴史学の分野でも残念ながらジェンダー史の研究成果が歴史学全体のなかに幅広く浸透しているとはいえず、中・高等学校の歴史教科書や『講座』など、「正史」とされる書物にジェンダー史の成果はわずかしか登場してこない。
本書は、その状況を打破し、歴史学における「ジェンダー主流化」への一里塚とするべく刊行された。
従来の政治史や事件史中心の歴史学が切り捨ててきた女性や非主流の男性、マイノリティに焦点を当て、これらの人びとの豊かな歴史の営みと文化、激しい権力闘争、また歴史を動かした男性と女性の対抗ないし協力関係を浮き彫りにした、ジェンダー視点からの歴史の読み替えである。
構成は高等学校の世界史教科書に則していて、アジア・アフリカ・ヨーロッパ・アメリカという広い範囲を、古代文明の時期からグローバル化の進展する現代世界まで読み解いている。仏教、儒教、ヒンドゥー教、イスラーム教、キリスト教という宗教世界とジェンダーの関係もわかる。さらに、女性史・ジェンダー史の方法論や家父長制・人口・身体・男性性などジェンダー史にとって重要な論点についても言及されている。
学校では習わなかったジェンダーの歴史が、豊富な写真や図表、史料とともに、最先端の研究をもとに総勢20人もの第一線の研究者によって平易に解説されている。編者としては、女性史・ジェンダー史のこれまでの研究成果を凝縮した、ジェンダー史の宝庫だと主張したい。辞書としても読める一冊である。
本書刊行と合わせて「比較ジェンダー史研究会」のHPを用意した(http://ch-gender.sakura.ne.jp/wp/)。本書に盛り込むことができなかった史料・資料や図版のほか、研究会の成果などを提供している。こちらのHPもぜひ訪問してみてください。(編者の一人 姫岡とし子)
カテゴリー:著者・編集者からの紹介