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『獄中メモは問う 作文教育が罪にされた時代』佐竹直子

2015.05.15 Fri

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.日本が、戦争へとまい進していたさなかの1940年(昭和15年)~翌16年にかけて、北海道で50人を超す青年教師たちが治安維持法違反容疑で逮捕された「北海道綴方教育連盟事件」の実像を、1年半かけて追ったルポである。

この事件で逮捕され2年半もの間刑務所に拘禁された元教員の1人が、刑務所内で書いたとみられる「獄中メモ」を、2013年8月に著者である私自身が偶然に見つけたことが、長期取材のきっかけだった。

メモには、子供たちに慕われた「先生」たちが、特高警察や検事らの暴力やおどしによる強引な取り調べや、調書の改ざんによって、「罪人」へと仕立て上げられていく過程が如実に記されていた。

以来、全国を歩き事件関係者の遺族や教え子らを訪ね歩き、証言や記録を拾い集めてきた。この事件は、三浦綾子の最後の長編小説「銃口」の題材となったことでも知られるが、実際に、逮捕された教員やその家族が残した日記や、古びた記録、突然恩師を失った子供たちの事件当時の作文は、小説よりドラマチックに事件の悲惨な実態を私に語りかけてきた。

一方で、有罪判決を教員たちが指導した子供たちの作文も収録した。どれもみずみずしく美しい文体で、「罪」という言葉とは到底結びつかないと、多くの読者が感じることだろう。

彼らを追い詰めた検事、関連事件にかかわった元書記官、司法当局と果敢に闘った弁護士…。

出版以来、「映画のような物語だ」とよく読者に感想を言われるが、これが、小説ではなくノンフィクションであることを、強調したい。戦時体制に国家総動員で突き進んだ時代の、埋もれかけた史実である。

今こそ、1日も早く、1人でも多くの方にこの悔恨すべき過去の記録を伝え、現代を、そして未来をどう生きるか考える材料にしてもらいたいと、強く願う。
 (著者 佐竹直子)








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タグ:憲法・平和 / / 戦争 / 教育