女の本屋

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『出産施設はなぜ疲弊したのか』 中山まき子

2015.08.04 Tue

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 21世紀に入り、産科の閉鎖、産科医師不足などがクローズアップされ、生まれにくい社会というだけでなく、子どもを産みにくい社会になりつつある。

本書では、1940年代から2008年頃までの日本の出産環境の疲弊を読み解くことを主題としている。出産を担う三種類の施設、つまり助産所・診療所・病院がなぜ次々と閉所し、産科不足・産科医療者不足と言われるようになったのか。こうした施設数の減少、施設の中身や運営レベルの低下や劣化、施設の状況悪化など、勢いや活力が弱まる状態を「疲弊」と表現する。

第1部(第2章〜第3章)では、日本の約4割強の出産を担ってきている診療所(19床以下の施設)の疲弊の一端を明らかにする。同時に、診療所の介助者養成を担った「日母産科看護学院・日母産婦人科看護研修学院」の存在とその半世紀の盛衰を解明し、診療所での出産の隆盛・矛盾・違法行為、やがての弱体化を読み解く。

第2部(第4章〜第6章)では、第4章で助産所の疲弊を解読する。第2次世界大戦終結後助産所という存在は、開所・運営継続に際し必ず嘱託医師を必要とすることが医療法に定められてきた。助産所と嘱託医師の良好な関係は出産する女性たちに豊かな出産環境を提供してきた。しかし、医療法に組み込まれたヒエラルヒー構造によって、良質の関係性が奪われることもある。その具体例として、医療法第5次改定の経緯を詳述し、既存のヒエラルヒー構造が、いかなる議論、審議、法律対応の要点整理などを経て加筆修正され、助産所の開所・運営のハードルを高めたか。助産所が激減する実態を解明する。第5章では、産科・産婦人科病院(20床以上の施設)の疲弊を読む。病院の産科を疲弊させ劣化させた二つの要因、つまり、「日母産科看護学院の盛衰」と、「医師臨床研修制度」(2004年開始)の導入である。第6章では、厚生省・厚生労働省の出産・産科・周産期に関わる1990年代から開始された複数の政策の内容・意図・政策成果について解読する。主に「周産期医療対策整備事業」と「出産の集約化・重点化政策」を核として読み解く。

総じて、出産施設の質的・量的な疲弊のありようを明らかにするとともに、各施設の「考え方・判断基準、関連諸団体とのポリテック」を整理し、助産所、診療所、病院の疲弊の連鎖関係をも考究する。

「正常なお産は病気ではない」、こうした考え方を思い起こしつつ、本書が日本の出産に関わる医療の現況と課題を考え、また出産文化が今後どのような方向に進んで行けば良いのかを考える契機になることを願っている。 (著者・中山まき子より)

目次は次ページにございます。

はしがき

序章 出産をとりまく様々な環境

 第1節 本書の問題意識と課題

 第2節 法的に認められた出産方法とその変容

 第3節 なぜ出産は施設化されたのか

 第4節 助産から分娩管理・母子管理への方針転換

<第1部 診療所と日母産科看護学院の半世紀     

第1章 日母産科看護学院の分析と先行研究

 第1節 日母母性保護醫協会(日母※ニチボ)の時期区分と先行研究

 第2節 日母産科看護学院に関する先行研究・問題意識

第2章 日母産科看護学院の半世紀

 第1節 第1期:助産補助要員育成への準備期

 第2節 第2期:愛知県支部の開所から全国的な学院基準づくりへ

 第3節 第3期:日母産科看護学院の全国展開とそれに対する批判

 第4節 第4期通期:全体像

 第5節 第4−1期:無資格者の医療行為に対する綱紀粛正過程

 第6節 第4−2期:看護師・准看護師の助産行為に対する綱紀粛正過程

 第7節 日母産婦人科看護研修学院の廃止後

第3章 日母産科看護学院の隆盛・衰退

 第1節 第1期から第4期までの特徴

 第2節 誰のための出産医療か

<第2部 助産所・病院の疲弊と厚生省政策>

第4章 助産所の疲弊と医療法第5次改定の経緯

 第1節 医療法改定前の助産所関連調査

 第2節 医療法第5次改定に向けた検討会

 第3節 改定医療法の成立と助産所の未来

 第4節 第4章の結び

第5章 日本医師会の「医師臨床研修制度」導入と

       日本産科婦人科学会の「医療提供体制検討委員会」設置

 第1節 「医師臨床研修制度」の導入と医師不足の加速

 第2節 日本産科婦人科学会の参入

 第3節 第5章の結び

第6章 厚生労働省の出産に関わる諸政策

 第1節 厚生労働省事業の全体像

 第2節 周産期医療対策整備事業

 第3節 「オープン病院化」・「医療資源の集約化・重点化」事業へ

 第4節 「総合周産期母子医療センター」と「集約化・重点化」の内実

 第5節 第6章の結び

<終章 出産施設はなぜ疲弊したのか>

 第1節 三種の出産施設にみる疲弊: 結論1

 第2節 出産を担う専門職者にみる疲弊: 結論2

 第3節 出産施設全体の連動関係と疲弊: 結論3

引用・参考文献一覧

政策関連引用・参考資料








カテゴリー:著者・編集者からの紹介

タグ:身体・健康 / / 出産 / 医療 / リプロダクティブ・ヘルス / リプロダクティブ・ライツ

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