2011.12.24 Sat
11月12日から25日は女性に対する暴力防止運動期間です。名古屋市男女平等参画推進センターでも毎年11月には女性に対する暴力防止(DV防止)に関する事業を実施しています。
今年度は26日(土)に、ジャーナリストで、現在は和光大学教授でもある竹信三恵子さんを東京からお呼びして、「DVの視点からみる女性の貧困の現状」についてお話しいただきました。この日は、名古屋市内のいろんな機関でイベント開催が重なる中、当事者、支援者それぞれに関心のある方々がご参加くださいました。中にはかけもちで参加された方もいて、この講演会への期待の大きさがうかがわれました。
「結婚は女性を貧困から救うか?」と、レジメの一行目で問いかける竹信さん。2008年に取材した記事を参照しながら、経済的基盤があったにもかかわらず、結婚によって貧困になる女性の事例を取り上げました。「女の子は結婚すればいいから」という言説に対し、「DVを伴う結婚は、女性を結婚前より貧困にし、脱出力を奪う」と、竹信さんは結婚が決して女性の経済力を補完するものではないと言います。
続けて、日本の女性の貧困率の高さや労働環境の男女間格差について、データを用いながら、いかに日本が女性に厳しい国であるかを説明されました。中でも「働くシングルマザーが働かないシングルマザーより貧困率が高いのはトルコと日本だけ」という事実は、大きなショックでした。日本の救済支援が生活保護しかなく、「夫と家」に頼っているセイフティネットも問題です。「夫を前提とした経済・社会システムがDVを招き、同時にDVを避けて家を出ることを阻んでいる」という現状をわたしたちは認識しなくてはなりません。
さらに1985年に制定された男女雇用機会均等法。労働の規制緩和と福祉制度の巧妙なからくりを指摘しながら、貧困を考慮しない男女平等政策の在り方を竹信さんは問います。「本当の男女平等は男性の働き方を規制しなければならない」とヨーロッパの例をあげながら、日本の働く女性の支援政策に対して厳しい目を向けます。また、女性の貧困は子どもの貧困につながり、今後増えていくであろう貧困の連鎖も問題視しています。
取材とデータに基づいて事実が裏付けされた竹信さんのお話は、現在の日本の状況を深刻に受け止め、きちんと考えなくてはならないことを、わたしたちに教えてくれました。確かに女性を巡るさまざまな問題、とくにDVに関する問題は、解決すべきことが山積みされており、ともすれば徒労感に襲われてしまうこともあります。会場の参加者の中にも「なぜ日本はこんな状況なのか」「どうすればよくなるのか」という疑問や変わらない苛立ちを抱えている人も多かったことと思います。
それでも「変わらないと思って何もしないより、何も言わないより、少しでも行動しよう、声を上げていこう」と竹信さんは力説します。DV防止法も女性たちの行動から生まれた法律です。竹信さんのエネルギッシュなエールで、会場にいるわたしたちも希望を持って進みたいと元気をいただきました。
カテゴリー:参画プラネット
タグ:貧困・福祉 / DV・性暴力・ハラスメント