2012.06.29 Fri
6月の市民交流事業は、坂東眞理子さんによる講演会をおこないました。タイトルは、「女性の仕事は後半からがおもしろい-仕事、結婚、家族、老い」です。
坂東さんは、世に男女機会均等法のない時代に官僚としてキャリアをスタートし、結婚後も家庭と仕事を両立して活躍されてきた方です。2003年に内閣府男女共同参画局長を退職され、現在は、昭和女子大学学長。評論家としても知られ、33冊目の著書「女性の品格」が300万部を超える大ベストセラーになりました。また、坂東さんは、名古屋市男女平等参画推進センターが開館したときにテープカットをしてくださった方で、センターの生みの親のお一人です。
この講演では、今年5月に上梓された上野千鶴子さんとの対談集「女は後半からがおもしろい」のタイトルにあわせて、女性の人生の後半期を、いかに充実させ楽しく過ごすかについてお話しいただきました。
日本は高齢化が進んで、現在は人口の23.3%が65歳以上。これらの人々の人生の後半期の過ごし方が、私たちの社会に及ぼす影響は大きいと言えます。一般に高齢化社会と聞くと、活力がなくなる、社会保険や税の負担が増える、停滞する、などマイナスイメージを感じる人がほとんどです。
しかし、70代であっても97%の人は健康ですし、20年前の65歳の体力は、現在の75歳と同じだそうです。すごい若返りですよね。もはや、高齢者といっても、昔のように枯れていくイメージとは程遠いものがあります。悠々自適というように、自分の趣味や個人的な関心事にエネルギーを注ぐという生き方もありますが、この若さを生かさないともったいない、というお話にもうなずけます。
一人一人が自分の良さを見出して磨いていけば、社会に貢献し、活力を与えることができる、とここでご自分の例を挙げられました。33冊目の著書がベストセラーになったのは、坂東さんが60代に入ってからだそうです。人生があまり見通せない若い時期に達成するよりも、さまざまな経験をし、苦労を重ねた末の後半期に結実するものは、特に味わい深いのだろうと想像します。
後半期の暮らしの具体的な戦略としては、①おしゃれをする、②持ち物を吟味し減らす、③自律・自律、④クリアな脳を保つ、⑤社会とつながる、⑥若い人のメンター、スポンサー、ファンになる、⑦賢いお金持ちでいる、の7つが紹介されました。
なかでも印象的だったのは、⑤の「“きょうようがある”、“きょういくがある”人は元気」という言葉です。これは「教養がある」「教育がある」人、ではなくて、「今日用がある」、「今日行くところがある」人、という意味です。
たしかに、用事があって、出かけなくてはならないと思えば、朝起きて身支度を整えてと、ある程度の緊張感を持ちつつ、身ぎれいにすることにも自然に注意が向きます。頭も使いますし、生活の張り合いや社会性を保ち、新しいネットワークを作ることもできます。特に人生の後半において、外で会う人や出かける用事の有無が、私たちの人生の質を大きく左右するのです。些細なことのようでいて、その意味合いは大変深いものとして、心に残りました。
会場は30代、40代の、今後人生の後半期を迎える年代の方々が、メモをとりながら熱心に聴き入る方が目立ちました。これからの生き方を考えるうえで役立つヒントを得た方も多かったのではないでしょうか。
坂東さんは講演会の90分間、ずっと姿勢よく立ったままでした。私が受けた印象は、「若々しく、にこやかでエネルギッシュな女性」、の一言。“健康に気を付けて、熱意をもって打込む”生き方を、まさに実践されています。後半期に向けて、私が今すぐできることはなんだろうと、お話しを伺いながら考え続けた講演会でした。
(塚田 恵)
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