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NPO法人参画プラネット☆つながれっとシアター「一日、まるごと!つながれっとシアター」

2012.07.25 Wed

7月の市民交流事業は、「一日、まるごと!つながれっとシアター」と題して、センター内の2会場において、一日映画上映会をおこないました。また、映画上映に合わせて、ビデオジャーナリスト白石 草(はじめ)さんによるトークイベントを開催しました。

上映作品は、ジェンダーの視点から選ばれた7作品のほか、介護、女性の生き方、高齢者の自立がテーマの映画『老親』、韓国女性労働者の労働運動を記録したドキュメンタリー映画『Weabak:外泊(ウェバク)』、アメリカの市民メディア活動や独立系メディアを紹介する記録番組3作品、福島原発事故をテーマにした4作品など、多岐にわたるものでした。なかでもセクシャル・マイノリティーをテーマにした短編ドキュメンタリー作品『今を生きる~セクマイの未来(あした)~』は、専門学校の卒業製作として作られたもので、当日は監督の森下尚貴さん、助監督中村理恵さんのお二人から上映前にご挨拶がありました。

午後に入り、白石さんを迎えての「シアタートーク」が始まりました。白石さんは、大手テレビ局での勤務を経て、2001年に「OurPlanet-TV」というネット放送局を設立し(現在はNPO法人)、代表を務めています。10年間にわたって、マスメディアと異なる視点で発信を続けた功績から、2011年には放送ウーマン賞を受賞しました。

OurPlanet-TVは、市民が主役と位置づけられており、“Standing together”-共にいて発信する、”Creating the future”-一緒に未来を作っていく、との理念に基づいて運営されています。主な活動は、インターネットでの放送、メディア関連資料やビデオ作品が閲覧できるメディアカフェの運営、映像撮影・編集作業を学べるワークショップの開催です。参加者は20代から70代に及んでいます。近年では、“誰もが発信できる時代”として「トーチプロジェクト」を企画し、これまで社会でマイノリティとして扱われ、メディア放送により傷ついてきた人たち-例えば、刑務所に収監された人、元ハンセン病患者、釜ヶ崎に暮らす人々、薬物依存症のある人など-が当事者となって、単に撮られる側ではなく、自らカメラを回して映像を作り、発信するという活動を始めています。

白石さんが最初に入社した大手メディアは、男社会の気風が強く、ほとんど女性がおらず、そこに働く人には大変過酷な状況だったそうです。“ジェンダーの視点はもちろんまったくなく、文化が歪んでいる。でも、その是正も難しい”世界。そこに疑問を感じて、「誰もが自由に発信できて、誰もが人権を守られるメディア」を求め、現在の活動を開始されました。

今回のシアターでも、OurPlanet-TVの作品がいくつか上映されましたが、その1つがアメリカの市民メディア活動を紹介するものでした。現在、アメリカには数千のチャンネルがあり、放送はもちろん、撮影、編集のワークショップが盛んに実施され、ボランティアが多数参加していて、誰もがメディアに係われるような工夫がされています。街中にあるメディアセンターは、敷居の低い、オープンな運営が印象的でした。これらのメディアでは、根幹にジェンダーの視点がきちんと存在しており、それは社会的弱者と見なされる人の人権を守る上でも不可欠と位置付けられています。

白石さんによれば、「日本の場合、メディアの新旧に係わらず(TV、インターネットともに)、ジェンダーの視点が大きく欠如している。ことにインターネットでは女性差別が著しい」とのこと。機関の構成員についても、ほとんど男性で占められ、男女比が大きいなど、日本のメディアの問題について指摘がありました。

昨年起きた福島第一原子力発電所の事故を契機に、避難生活を強いられた人たちへのインタビューの作品も、日常生活そのままのなかで自然に語られる姿が強く印象に残りました。小さな独立メディアでも、信用されているからこそ、自らの体験を語る人も多いのではないでしょうか。事故から一貫して福島の人々の現状を伝え続け、現在もビデオ上映やイベント開催などで、私たち被災地より遠く離れた人に生の情報を届けようとする真摯な姿勢が伝わってきました。白石さんは「被害より復興へと移っていく、マスメディアにおける事故の風化が気になる」と話されました。

話題は、最近の首相官邸前での反原発デモの報道に移りました。今回のデモの参加者は、団体に属さない、子連れの母親など個人の参加者が多いこと、マスメディアが報道しないからといって参加した人も多く、信頼できるメディアに対しては積極的に発言するなど、これまでのデモの参加者像とは大きく違っており、「参加者一人一人の過渡期なのでは」とその印象を話されました。チェルノブイリ原発事故を契機に、フランスで始まった海賊放送から、コミュニティが生まれ、やがて緑の党が政党として成立した例を挙げ、「生活の中で困難から立ち上がっていける人には、社会を変えるという意識が芽生える。事故をきっかけに生き方や暮らし方が見直されており、特に女性たちの力、メディアの関わりによって、これから新しいものを生み出せるのでは」と結ばれました。

これまで大手メディア以外の報道というと、USTREAMかニコニコ動画を時おり観るくらいでしたが、今回の上映会と白石さんのお話から、日本でも独立系メディアが市民を巻き込みつつ、積極的に活動を広げていることを初めて知りました。昨年以来、原発事故の画一的報道や自粛の様子から、大手メディアはもはや信用できない。しかし、ネットは過激で偏りが大きいからと敬遠する人は多いと思います。私はこれまで、「報道のあり方を変えるなど個人ではできないし、そもそも自分とは遠いもの」という思いが強かったです。今回、日本の新しいメディアの可能性を見聞きして、「こんなのもありか~」とメディアがぐっと身近になり、新しいものが生まれてくるかも、と今後が楽しみになりました。

90分という短い間で、質疑応答に十分時間がとれずに残念でしたが、白石さんのOurPlanet-TVの活動にかける静かな闘志を感じました。参加者の方からも、今回のつながれっとシアターについて「とても有意義だった。ぜひまたやって欲しい」という声を聴かせていただき、大変うれしく思いました。(塚田 恵)

   

カテゴリー:参画プラネット

タグ:映画 / メディア