2013.03.26 Tue
男女雇用機会均等法第11条では、「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」としてセクシュアル・ハラスメントに対する法的措置が掲げられていますが、日々、女性たちが過ごしている就業の場では依然としてセクシュアル・ハラスメントの被害は継続しています。あわせて、未だ可視化されていないマタニティ・ハラスメント及び女性であるという理由でのパワー・ハラスメント等が多数存在している現状もあります。
こうした状況から、就業の場における女性の活躍推進において、ハラスメント対策は欠かせないものであるにも関わらず、現状では被害当事者の救済にとどまり、組織的及び社会的にそれを根絶するアプローチが明確化していないことが課題となっています。
シンポジウムでは、浅倉むつ子さんの基調講演、その後のパネル・ディスカッションでは、浅倉むつ子さん、大脇雅子さん、和田肇さんがパネリストを務め、就業の場における女性への暴力の実態を把握するとともに、女性が働き続けるための環境整備と暴力を根絶するための方策等について、参加者とともに考える機会を持つことができました。
■基調講演
浅倉さんは「女性に対する暴力とは」について整理され、根絶に向けて国連をはじめ世界全体で取組んでいる状況を伝えました。その後、日本の取組みとして、事業主のセクシュアル・ハラスメント防止措置義務が定められた均等法について触れ、法が定まった後でも、未だに増大する一方のセクシュアル・ハラスメントの実態について明らかにしました。
次に、その他のハラスメントとして、①アカデミック・ハラスメント、②ジェンダー・ハラスメント、③マタニティ・ハラスメント、④パワー・ハラスメント(パワハラ)をあげられました。今回は、パワハラの事例として「リコープロダクション・プリントソリューションズジャパン事件」の裁判例を取り上げ、男性職場における唯一の女性営業職として働いていた女性へのパワハラの実態から、「パワハラ事件は、(セクシュアル・ハラスメントと異なり)業務上の権限行使にみえるため、「暴力」「暴言」などの証拠がないかぎり立証が難しい」ため、「職場のいじめ防止義務」を記載するための法改正など、国としての早急で実効性ある対策が必要と提案されました。
■パネル・ディスカッション
第二部のシンポジウムでは、大脇雅子さんが数々のセクシュアル・ハラスメントの事件例を取り上げ、性的言動が職場のなかでなされることは女性差別であると社会が認識するまでには、多数の裁判が起こされ、判例が積み重なり立法へとつながったこと、そして、女性たちが連帯して裁判を闘い、運動を起こし、こうした権利を獲得してきたことなど、ご自身が関わってきた議員立法の経験も含めて語ってくださいました。
また、和田肇さんは、ハラスメント根絶に向けた研修や講演会などの講師を引き受ける機会が増えており、こうした研修などは回を重ねて実施していくことが重要であること、今日的な課題として、アカデミック・ハラスメントの被害が可視化されてきた現状があること、部活動や学校内でのいじめ問題やテレビ映像における暴力的表現など、日本社会が暴力に対して悪い意味で寛容であることなど、具体例をあげて語ってくださったのです。その後のディスカッションでは、参加者の方々からの質問や意見を基に、パネリストの方々とともに、ハラスメント根絶に向けた方策が検討されていきました。
労働法をキーワードに、研究と実践、そして当事者の方々からの貴重な発言もあり、ハラスメントのない社会づくりへ。さらに一歩!進んだシンポジウムとなりました。
(渋谷典子)
カテゴリー:参画プラネット
タグ:DV・性暴力・ハラスメント / 労働 / 働く女性
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