2013.09.05 Thu
8月の市民交流事業は、つながれっとシアター『森の中の淑女たち』の映画上映と交流会をおこないました。本編上映の後には、今年1月の渋谷アップリンクの上映会での、上野千鶴子さんのシアタートークも合わせて映像でご紹介しました。当日は昨夜からの大雨。あいにくのお天気でしたが、約90名のご参加がありました。
この作品は、1990年にシンシア・スコットが51歳で初めて監督として製作したものです。舞台はカナダ、ケベックの森。ストーリーは、8人の女性がバスの故障により、森のなかで足止めを食うところから始まります。人里離れた森を歩き出す姿には悲壮感はなく、平均76歳の淑女たちは、上野千鶴子さんの言葉を借りると3泊4日の「女子会サマーキャンプ」を楽しそうに過ごすのです。驚いたことに、20代のバス運転手を除いて7人は演技経験がない女性ばかり。監督は、大まかなシナリオだけで、細部を決めずに映画製作をしたそうです。映画ではそれぞれが本名を用いていて、自分の人生をお互いに語り合います。
息子をなくした悲しみ、病気のあとの不安など、誰の身にも起こりそうな経験が語られる一方で、修道女としての人生や、60代でレズビアンをカムアウトしたこと、といったそれぞれの特別な経験も、静かな口調で明らかにされていきます。映画のストーリー自体に大きな展開はなく、穏やかで坦々とした調子なのですが、一人ひとりの語りに耳を傾けていくうちにぐっと引き込まれていきます。語りの合間には、あどけない子ども時代から中年の頃までの個々人のポートレートが数枚、無音で映し出されます。その静かな間(ま)は、女性の人生の一つひとつの重みを象徴しているようでした。
休憩後、上野千鶴子さんのシアタートークの上映が始まりました。登場人物の誰に一番共感するか、自分はどんな年寄りになりそうか、といった問いかけ、男性ばかりのグループならどう展開するだろうか、男女混合ならどうかなどと、自分にはなかった多様な視点を提示され、イメージが膨らみます。また、観る側が何歳の時に観るかで、印象や感想が変わる可能性を含んだ映画だろうという言葉にもうなずけます。10年後、20年後の自分がどう感じるか。それを確かめるのも今後の楽しみにできて、どの年代の方にも何度でも楽しめる映画です。
交流会には30名を超える方々がご参加くださいました。いくつかのグループに分かれて、映画の感想のシェアリングをしていただきました。簡単な自己紹介を交えながら、自分だったらどうするか、というテーマや、もっとハプニングがあるかと思ったという声など、多様な観点からのお話が活発にされて、30分間の時間が短く感じられました。
毎回思うのですが、1つの映画について語りあうことで、こんな楽しいひとときが作り上げられるとは素晴らしいことですね。初めて会った方々による、文字通り「一期一会」の機会という貴重さ。見ず知らずの人たちと短くても価値ある時間を分かち合うのは、今回の映画のテーマとも重なります。これこそ、映画による「市民交流」だなあとしみじみ感じました。これからもシネマ&トークでお待ちしております。(塚田 恵)
カテゴリー:参画プラネット
タグ:映画
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