2013.11.14 Thu
平等はビジネス向上のカギ
女性エンパワーメント原則 WEPs(Women’s Empowerment Principles)で、女性の活躍を推進!
■講師
・大西祥世(グローバル・コンパクト研究センター研究員、法政大学兼任講師)
■ゲスト
・加藤千恵(株式会社エステム:WEPs署名企業)
■日時:2013年10月11日(金) 講演会/14:30~16:00 交流会/16:15~17:15
■会場:名古屋市男女平等参画推進センター 交流ラウンジ
■後援:UN Women日本国内委員会、公益財団法人21世紀職業財団
講演会
★基調講演
講師の大西祥世さんは、WEPsの重要性をとらえつつWEPsが抱える課題に正面から取組んでこられました。また、2009年以降毎年3月に国連で開催されるWEPs年次会合に参加されており、WEPsと「女性の活躍」との関わりについて、世界全体そして国内の状況をふまえ多方面から語ってくださいました。
・WEPsとは?
国連では、職場、市場、地域におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの一層の推進をめざして、国連グローバル・コンパクト(UNGC)事務所とジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)が、2010年に「女性のエンパワーメント原則(Women’s Empowerment Principles:WEPs)を共同で作成しています。講演会では、このWEPsをキーワードに、「女性の活躍は、人権にもビジネスにもメリットがある」という視点で進められました。
人権保障と平等推進の担い手として、近年は政府だけでなく企業の役割が重視され、CSRに関する国際的・自主的な取組みが整備されています。こうした背景の下、2000年に国連グローバル・コンパクト(UNGC)が「GC10原則」を作成したことが出発点となり、WEPsの作成へとつながりました。
WEPsは、次の7原則で成り立っており、WEPsへは「企業が署名する」という形式で参加します。
(1)トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進
(2)機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃
(3)健康、安全、暴力の撤廃
(4)教育と研修
(5)事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動
(6)地域におけるリーダーシップと参画
(7)透明性、成果の測定、報告
2013年10月1日現在、608社のCEOが(うち、日本企業は203社)署名しています。
・WEPsの意義と効果
WEPsに署名することにより、①企業の取組みの「見える化」が可能となり、②雇用の適正化をもたらし、③女性の力を生かして業績アップへつなげるという好事例がみられるようになってきました。日本企業の取組みとしては、①トップのリーダーシップによる推進、②ワーク・ライフ・バランスの促進、③データの公表とポジティブ・アクションの運用、④NGOやスポーツチームへの支援といった特徴がみられます。一方、①トップは表明するが、なかなか実行につながらない、②男性の育児・介護休業取得の実態が明確でない、③女性のエンパワーメントと通じたビジネスの発展およびコミュニティへの貢献という視点がみられない、④PDCAサイクルの透明性、公開性が不十分といった課題もみられるとのことでした。
さて、女性のエンパワーメントの視点から平等を進めることは、企業にとってどのような影響をもたらすのでしょうか。企業の取組みの良いところを国際的な基準によって評価でき、これからの「伸びしろ」を見つけることができる、そして、サプライチェーン、地域、NGOといったステークホルダーと連携できることと、大西さんは明言されました。WEPsへの署名によって、企業が発展していくプロセスに注目が集まっています。
★ゲスト・トーク
ゲストとしてお迎えしたのは、株式会社エステムの加藤千恵さんです。加藤さんは、自社のWEPs署名経緯、影響と効果、今後の課題について語ってくださいました。
株式会社エステム URL http://www.stem.co.jp/company/profile.html
・署名への経緯と影響
名古屋市南区に本社がある株式会社エステムは、水処理施設の維持管理・設計・施工監理およびコンサルタント業務・環境測定に関する業務およびコンサルタント業務等を事業として行っている会社です。420名の従業員のうち、87名が女性(20%)です。代表取締役会長の鋤柄修氏は、中小企業家同友会全国協議会(中同協)会長を務め、「企業は社会の公器です。利益は手段であり、目的であってはなりません」(「同友Aichi」2011年12月1日号掲載:http://www.douyukai.net/50th/?page_id=348)と企業経営者としての姿勢を示される方です。
株式会社エステムでは、WEPsについて内閣府からの紹介を受け、WEPsという活動自体が企業活動に刺激になること、そして署名には費用がかからなかったことも動機の一つとなり、署名されたとのこと。現段階では、特に効果を感じていないとのことですが…。今後の課題は、明確に分析されていました。
まず、第一の課題は、女性の職域拡大とのこと。この課題は、業務の拡大につながる可能性があるとのことです。第二の課題は、従業員の意識改革。無意識に慣例にしばられ、性別役割分担の意識をもってしまっていることに対して、10年から20年先をみて考え行動する意識を醸成することが重要…と語ってくださいました。
交流会
ゲストの加藤さんのお話を受け、株式会社エステムの事例へ大西さんからのコメントでスタートしました。大西さんは、株式会社エステムにおけるWEPsの取組みへ、次のような示唆をくださいました。
①企業文化として根付いている。
②男女関係なく配置している。
③インクルージョンが進んでいる。
④企業の展望が考えられている。
⑤新しいビジネスへ取り組もうとしている。
⑥企業文化を変える兆しがある。
その後、参加者お一人おひとりからのコメントも続き、WEPsをキーワードにして「人権、平等」と「女性の活躍推進」の接点を見つめる時間を過ごすことができました。
とはいえ、WEPsの取組みは、日本国内、そして、中部地域においても、まだまだ伝わりきれていない状況です。企業の発展が企業を構成する従業員一人ひとりの発展へとつながるWEPs!平等はビジネス向上のカギ―まず第一歩は、WEPsへの署名からはじまる…と確信しました。■渋谷典子■
カテゴリー:参画プラネット
タグ:エンパワーメント / NPO法人参画プラネット