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回答23:吉田容子弁護士

2014.08.06 Wed

1、大学・短大・高校などの卒業予定者に対する定期採用などに際し、採用内定の手続きが取られる場合が多いと思います。この「採用内定」が法的にどのような意味を持つかについて、判例・通説は、次のように考えています。

① 企業による募集は、労働契約申し込みの誘引である。

② これに対する応募(受験申込書や必要書類の提出)や採用試験の受験は、学生による契約の申込みである。

③ 採用内定通知(文書)の発信は、企業による契約の承諾であり、これによって労働契約は成立する。

2、このようにして一度成立した労働契約は、企業・学生の双方ともに、解約することができないのでしょうか。

(1)企業は、内定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実であって、客観的に合理的で社会通念上相当と認められうる事由が発生した場合には、この契約を解約(内定取消)することができると考えられています。

例えば、予定の時期に卒業できなかった、長期療養などのため決められた期日に出勤することができなくなった、健康状態の悪化によって職務遂行が困難になった、重要な採用手続きを正当な理由なく怠った、経営上の理由により労働者を就労させることが困難になった、などの場合です(最後の「経営上の理由」については、企業において厳格な要件を充たすことが要求されます)。

(2)これに対し、学生からする内定取消(内定辞退)は、何時でも自由にすることができます。既に労働契約が開始している場合でも(入社し就労を開始した後でも)、労働者は2週間前に予告すればいつでも退職できるのですから(労働契約を解約できるということ。民法627条1項)、就労前の辞退にはより広い自由が保障されるべきだからです。学生が当該企業に誓約書を提出している場合でも、この内定辞退の自由が制限されることはありません。

もっとも、学生が内定取消(辞退)をしないまま就労開始日を迎えた場合には、企業との間で労働義務の不履行という問題が生じてしまいますので(その態様が悪質ならは、企業が内定者に損害賠償請求をすることがないとは言いきれません)、辞退するのならなるべく早めにその旨を企業に伝えましょう。

3、以上のとおり、A社から貴女に内定通知書が届いた段階で労働契約は成立しています。しかし、貴女はいつでも自由に内定取消(辞退)をすることができ、A社に誓約書を提出したからといって、この自由は制約されません。但し、内定取消(辞退)をするのであれば、なるべく早く(入社予定日よりも前に)してください。

希望の会社に就職できるかどうか、不安な日々をすごしていると思いますが、あきらめずに頑張ってくださいね。

カテゴリー:回答 / 吉田容子弁護士

タグ:くらし・生活 / no23 / 法律相談 / 吉田容子 / 損害賠償請求 / 定期採用 / 採用内定 / 労働契約 / 社会通念 / 内定取消 / 採用手続き / 経営上の理由 / 内定辞退 / 労働義務の不履行