2014.01.27 Mon
新年おめでとうございます。
昨年から始まったこのシリーズ、これからもさまざまな「女の仕事づくり」をご紹介していきます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
これまでご紹介してきた4人の方々が今の仕事に至るには、それぞれ紆余曲折がありました。今回ご紹介する伊勢茜(いせ・あかね)さん(44歳)も、その例にもれず。波瀾万丈の末にインドの古典医学アーユルヴェーダに出会い、そのオイルトリートメントを学んで、現在、京都で本格的インド式アーユルヴェーダサロン「ミラナ」を営んでいます。
◆至福の体験
私がアーユルヴェーダに関心をもったのはずいぶん前のことです。「額のきわにゴマ油がしたたり落ちるその快感に悶絶した」という評論家の桐島洋子さんのアーユルヴェーダ体験記事を読んで、以来いつか経験してみたいと思ってきました。しかし、アーユルヴェーダを名乗るところは美容サロン的なところが多く、本物に出会う機会はなかなかやって来ませんでした。それが、一昨年、「すごい! あなたも行くべし」と友人から紹介されたのがミラナです。
行って初めて分かったのですが、桐島洋子さんが受けたというのはシロダーラーという療法。友人が受けた療法はアビヤンガというハーブオイルの全身マッサージで、他にもいろいろな療法があり、体質によって使い分けるのだそうです。(詳しくは、http://www.milana.jp)
幸いにも私はシロダーラーが適応ということで、その悶絶の体験をすることにあいなりました。
まず問診やフットバスで足を温めながら肩、首、頭のマッサージを受けた後、いよいよベッドに仰向けになり、温めた油をたらりたらりと額の上部の端から端へと注がれます。機械でやるところが多いそうですが、茜さんは油を入れた専用のポットを手で持ってゆったりと流れるようなリズムで注いでくれます。油は頭の上部へと流れ落ち、お湯とはぜんぜん違う温かくてトロリとした心地よいリズムに浸ること、20分ぐらいでしょうか。油タラーリが始まると、桐島さんが悶絶と言ったのもうなずけます。実はあまりの気持ちよさに私はすぐに眠りにおちてしまって、実際の時間が全く分からないのです。最初からだと70分、初回は90分だそうです。
終わっても気持ちよく夢心地でまどろんでいるのですが、なのに頭はすっきり。頭や目から来る疲労にこれは効果バツグンです。セラピーを受けた日の夜はよく眠れます。そして翌日はお肌までツヤツヤ。頭にしか油を使っていないのに不思議なことです。「明日は講演」という方などもよくいらっしゃるそうです。
◆アーユルヴェーダとの出会い
茜さんは、19歳時シングルで第一子を出産、21歳の時にお父さんの経営する「潜水業」の会社で仕事を始めました。ところがそれから3年後、神戸空港建設中にお父さんと、家業を継ぐ決意をしたばかりの弟さんとを、船の事故で同時に失います。病院に向かったあとのことはほとんど覚えていないそうです。
潜水業は潜水職人を抱える男の仕事場です。これでこの会社もおしまいだと、仕事の元請会社など関係者の誰もが思ったはずです。ところが、茫然自失で迎えた通夜の席で、まだ5歳だった茜さんの長男を見かけると雰囲気は一転、まるで後継者お披露目の席のようになってしまったそうです。幼くても「男」であることが意味をもつ、そのことを茜さんはまざまざと見せつけられました。
男の仕事場では経営者の一族であっても女は女。見くびられて、セクハラ、嫌がらせ、裏切り行為、それまでは見えなかった人の世の酷さを茜さんは思い知ります。次第に追いつめられて「死んだ方がまし」とすら思うようになった時、ふと思い出したのが学生時代の友人の「インドに癒された」という言葉です。この時はじめて、インドに行こうと思い立ちます。1996年のことでした。
会社はお母さんに任せ、単身インドに渡ったのですが、最初は癒されるどころか、身ぐるみ剥いでもまだ奪い取って行くようなすさまじさに負けそうでした。しかし、そんな経験の果てに茜さんは気づいたのです。
「この人たちは、逆にこちらが求めればなんでも授けてくれる」。
そこから物事が好転するのに時間はかかりませんでした。すっかりインドに魅せられて、それまでブランド服に宝飾品という茜さんが、帰国したときは髪の毛はぼさぼさ、服装はクタクタ、かくして「インド病」にかかった茜さん、「インドでかかった病はインドに治してもらおう」と、以来、幼い息子と連れだって何度もインドに足を運ぶようになりました。その中でアーユルヴェーダに出会いました。
◆サロン開業
その後、結婚し、32歳で第2子に恵まれます。別の仕事を始めたこともあり、しばらくインドと離れていましたが、そのお子さんが2歳になった時再びインドに通い始め、これまで独学で学んできたアーユルヴェーダを専門的に学びたいと思うようになりました。そこで出会ったのが、日本女性で初めてアーユルヴェーダ医になった稲村晃江(イナムラ・ヒロエ・シャルマ)さんです。
稲村さんは、長く近代医療の場で働いてきましたが、「全人的に病気をとらえ、治療よりも予防に力点を置くインド5千年の伝承医学に心惹かれて」、1976年からインドのグジャラート・アーユルヴェーダ医大で6年間学び、その後現地でアーユルヴェーダの医師として活躍、帰国後は大阪アーユルヴェーダ研究所を設立して日本での教育と普及に専心してこられたパイオニアです。
その稲村さんに師事して、茜さんはアーユルヴェーダのトリートメントを体系的に学び、39歳でサロンを開業。それまでに何度もインドに足を運び、トリートメントのための質の良い材料を仕入れるルートを築いてきていました。本格的なトリートメントはもちろんのこと、オイルやハーブなどトリートメントに使うマテリアルの質の高さでもミラナは定評がありますが、トリートメントの前後に出される季節のハーブティ、サロンで使うお香など、すべて厳選された高品質のものを揃えています。何度も現地に赴いて仕入れルートをしっかりと築いてきたおかげです。
幼い頃から、インドに通い続ける茜さんのお伴をしてきた息子さんは、現在インドの大学院に留学中で、今では、母に頼まれたオイルやハーブを送ってくれる頼もしい助っ人でもあります。
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.
息子さんを通して送られてくる高級な材料を、茜さんは惜しみなく使います。眼精疲労に効果があるといわれるローズウォーターはイランから自分で持ち帰ったという大変高級なものですが、それをコットンにたっぷり含ませて瞼の上に置いてくれます。そのなんとも華やかで品のよい香り。セラピーの前後にいただくハーブティの香しさ。そんな一つ一つが、サロンに入った時から出るまで、豊かでよい香に包まれた、至福のひとときをもたらしてくれます。
開業後に離婚した茜さんにとってアーユルヴェーダは命、家のことは、会社を畳んで時間のできたお母さんに任せて、今はアーユルヴェーダ一筋です。施術するのが楽しくて仕方ありません。技を高めることにも余念がなく、一昨年からは、専門学校に入って鍼灸の勉強も始めました。来年には、鍼灸も取り入れた幅の広いトリートメントが受けられるようになるはずです。
詳しい情報、メニュー、予約はこちらからどうぞ。http://www.milana.jp
(中塚圭子・記)
サロン・ド・ミラナ
■住所:〒604-8365 京都市中京区四条通り錦大宮町130メゾンドール四条大宮1001
■TEL:075-811-3393
■メール:info@milana.jp
■営業時間:10:00~20:00 ・定休日 月曜日(不定休)
時間外予約等はご相談に応じます
■ホームページ: http://www.milana.jp