エッセイ

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【特集・衆院選③】税制調査会が変わる     三木義一

2009.08.16 Sun

 おぼえていますか?小泉という人が、「改革」と「規制緩和」を標榜し、総理大臣になったときのことを。

 このとき、テレビでは同じ小泉と名乗る若い俳優が出てきました。ビール業界は早速彼をCMに起用しました。なぜなら、当時は酒税のうち、特にビールの税率を上げることが不可欠とされていたからです。何という恥ずかしい戦略でしょう。でもビール業界の思惑はあたり、なぜか翌年の税制改革にビールの税率引き上げは盛り込まれていませんでした。

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なぜ、こんなことが日本では可能なのでしょうか。まともな国であれば、政治的不正の代表的なものとして責任を問われたはずです。その理由は日本の税制立法過程における権力の二重構造です。

 
 政府には税制調査会というのがあり、選ばれたエリートの人たちが行儀良く財務省の意向を配慮して、無難な改正案をまとめます。しかし、実質的にはほとんど影響力を持ちません。なぜなら、政府とはべつに与党に税制調査会が設けられており、ここが実質的に税制改正を決めてきたからです。

 与党の税調委員は「我々が政府税調を軽視しているという批判がありますが、それは間違いです。我々は軽視などしていません、無視しているのです」と豪語していたくらいです。しかし、この与党の税制調査会の議員たちは、政府の役職には就いていませんから、どのような不合理な税制改正を入れようとも、それは一議員としての政治的要求になり、税制改正についての権限行使ではありません。権限を持っている政府の要職の人たちは「与党に押しつけられた」改正内容を実現するだけになります。どこにも政治的汚職の手がかりはありません。
 
 これが、利権まみれの税制改正をうまくすり抜けるために自民党が作ったシステムなのです。今度の選挙において、民主党はこれを変えようとしているようです。「税制に関しては、現在の与党税調を廃止し、新たに政治家をメンバーとする政府税制調査会を設置、専門家で構成する専門委員会も新設して、税制のあり方について助言を求める」ことを具体策の中に盛り込んでいるからです。
 
 これは、相当大きな改革です。日本の利権構造を変えるかもしれません。なぜなら、政府の権限あるものが税制改正の内容を実質的に決めるのですから、不合理な利権的内容が盛り込まれていたら、それは政治的汚職につながるからです。こういう緊張関係の中でこそ、公正な税制改革がなされるべきだ、というのがこの政党の主張のようです。これが実現できたらすばらしい。本当にそう思い、その実現を期待したいと思います。

 そして、税制改革に筋を通して、CMどころか、改革といいながら「世襲」し、選挙を私物化している小泉さんという方のようなことができないようにしてほしいと思っています。具体的には、「政治団体の資金」を親族に承継したときは公益性が薄れるので、多額の贈与税を課して、世襲制度を税制上不可能にすべきです。

 皆さんもテレビを観て、この名前の俳優さんが出てきたら、このことを思い出してくださいね。

*教訓:李下に冠を正さず。








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タグ:政治 / 三木義一