エッセイ

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ヌエック事業仕分け見聞記   荒川ユリ子

2009.11.20 Fri

 連日、「事業仕分け」のことがニュースで大きく取り上げられていますが、第1日目の11月11日に行われた国立女性教育会館(以下「ヌエック」)関連のWGの傍聴に行ってきました。

 本来なら、そこで行われた議論の内容を報告したかったのですが、次に書きますように、レシーバーが手に入らなかったため議論はほとんど聞きとれませんでした。

 仕分け結果は、ヌエックの予算の大幅縮減ということになりましたが、マスコミでは詳しく報道されていないため、せめて「事業仕分け」の雰囲気だけでも知りたいとの要望をいただきましたので、見聞記として投稿いたします。「ヌエック」が女性たちにとって本当に役に立つ場となるように、広く議論が起きることを期待します。 「ヌエック」関連のWG の「事業仕分け」が、初日の9時半から朝一番で始まるとのことで、通勤時間帯の満員電車に乗り、土砂降りの雨の中、分かりにくい道を地図片手に、やっとの思いで会場の国立印刷局に着きました。

 外で、バッグの中身のチェック、ボディチェックがあり、やっと会場である体育館に入ってみると、中は報道関係者などでごった返していました。靴を脱ぐようにと指示があったのですが、スリッパはすでになく、雨で濡れているシート貼りの床を靴下のまま進むと、パネルで区切ったエリアがあり、そこが仕分けの行われる場所でした。後で報道関係の方に聞いたところ、朝6時過ぎには会場に入っていたそうです。私たちのような一般の傍聴者には、そのような情報はまったく入らなかったため、行ってみて初めて分かったのでした。

 一番困ったのは、レシーバーの数が十分でなく、私たちには手に入らなかったことでした。体育館で、同時に3つのWGの仕分けが行われることに、まず驚きましたが、音が重なって聞こえにくくなるのを防止するということで、議論はレシーバーを通してしか聞こえないのです。つまり、私たちレシーバーがない者には、何も聞こえない、WGのメンバーの口がパクパク動いているのしか分からないという状況でした。ネットで中継ということだったので、パソコンを持参していた方がネットにつなぎましたが、これもとぎれとぎれで、ほとんど役に立たなかったそうです。たまに声の大きなメンバーが発言すると、かろうじて聞き取れるという状態で、公開とうたいながら、これでは、おかしいのではないかと思いました。

 「ヌエック」の神田理事長と委員とのやり取りは、TVなどでずいぶん放映されていますが、ここだけは、声が大きかったので、少し聴きとれました。「目的外使用は?」などと、矢継ぎ早に、尋問のような強い口調の質問が続いて、たまりかねた神田さんが、「このような一方的な質問だけというのは心外です。私の話も聞いてください。それに、「ヌエック」という女性施設のことなのに、このWGに女性のメンバーが少な過ぎるのではないですか」と反撃したのです。しかし、十分話し終わらないうちに、中断されてしまいました。その後も、神田さんは発言したいように見受けられましたが、最後の方になって、ついにこらえきれない様子で、発言し始めました。しかし、これも「個人的なことは、結構です!」と、すぐに強く制止されてしまいました。

 レシーバーがない人がたくさんいて(そのほとんどが、一般の傍聴者でした)、なかの一人が「全然、聞こえませーん」と強く何度も抗議しましたが、まったく何の対策もとられずに続けられて、ついに1時間ほどで質疑は終了してしまいました。その後、あっという間に、各委員から評価シートが集められ、こんなに簡単に決められてしまうのかとあっけにとられているうちに、結果が発表されました。

 もちろん、これも聞こえませんでしたので、せめて最後の結果だけは知りたいと思い、レシーバーを持っていた報道関係の方に聞きましたところ、コストや人件費の削減、収益を上げる努力をして、予算を減らすようにとのことでした。現在でも予算は大変少ないのに、これ以上減らされたら、事実上事業ができないということです。

 仕分け人は、「ヌエック」には関係なさそうな方ばかりのような感じでした。議員メンバーにも民間人メンバーの中にも、神田さんが言われたように女性は少なく、「ヌエック」の利用者は、ほとんどいないような印象を受けましたが、このような大事なことを決めるのに、「ヌエック」のことをよく知っている利用者代表がいないことは、おかしいのではないかと思いました。

 それに、たった1時間程で、「ヌエック」と「国立青少年教育振興機構」「教員研修センター」という3団体のことを評決したのです。平均しても20分ずつしかありません。

 議論が聞こえなかったので確かではありませんが、見ていた印象では、「ヌエック」の質疑応答の時間は、かなり少なかったように思えました。これで決めるというのは、あまりに乱暴なような気がしました。「事業仕分け」が公開で行われるということ自体は、とてもいいことだと評価しますが、それに見合った環境設定と運営がなされることをぜひ望みたいです。

 この数年、「ヌエック」は単独館として存続できるかどうかという、統廃合の問題にさらされ続けています。2004年に続き、つい2年前も、独立行政法人見直しの中、「ヌエック」もその対象になっていました。その時は、たくさんの方々の存続へ向けての活動によって、なんとかしのぎましたが、またまた今回のようなことが起こりました。

 1977年、全国の多数の候補地の中から選ばれた武蔵嵐山の地に設立されてから32年間、日本の男女平等推進に大きな役割を果たしている「ヌエック」ですが、まだ、広く一般に知られているとはいえません。もっと、「ヌエック」のことが広まることが必要だと思います。

 また、今回もそうでしたが、存続が議論される時はいつも「稼働率」などの「数値」が重視されてきました。一般企業と違い、その業績が数値として表されることにはなじまない「ヌエック」ですが、「同一価値労働同一賃金」の問題で「職務評価」が試みられているように、「ヌエック」の業績がいかに国民に還元されているかを数値で表す手法があれば、もっと説得力が増すのではないかと思います。

 最後に、これが最も重要なことだと思いますが、「ヌエック」が女性たちにとって本当に役に立つ施設になるためには、どのようになったらいいのか、様々な立場から議論がなされることが不可欠だと思います。これがあってはじめて、「ヌエック」は真の意味で、その存続が支持されるのではないでしょうか。

カテゴリー:ちょっとしたニュース

タグ:荒川ユリ子 / ヌエック

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