2009.12.31 Thu
12月3日午後、「新政権との男女共同参画対話集会」が衆議院第2議員会館で開かれました。急な呼びかけにもかかわらず、雨が降る、12月初旬とはいえ真冬並みの寒さの中、「やっと、このような集会が開かれることになってよかった」と、50人ほどの参加者が期待に満ちた思いを持って会場に集まりましたが、そこに参加しましたのでご報告いたします。
最初に、今回の集まりの音頭取りをされた前千葉県知事の堂本暁子さんより、この会が開かれるまでの経過と趣旨の説明がありました。
「事業仕分けで、国立女性教育会館(ヌエック)の予算が大幅縮減という結果が出たにもかかわらず、同じように予算を削られた分野の関係者が復活の要望の記者会見をし、それが大きく報道される中、女性からの声は何もあげられていない。これではいけないと、急遽、「男女共同参画社会実現に向けた要望書」を提出することにし、このような集会を開くことになった。非常に短い準備期間だったが、燃えたくて仕方がないところに火がついたように、呼びかけ人や賛同者がたくさん集まった。今までの政権では、男女共同参画の実現はなかなか難しかったが、新政権になったので、ぜひ男女共同参画政策を推進してほしい。それが、女性も男性も、障害者も外国人も含め、差別のない民主的な社会を実現することにつながる。事業仕分けも、この視点を持って行ってほしい。具体的には、ヌエックの予算の削減や女性研究者支援の予算を切るということはやめてほしい。」
事業仕分けの報道以来、何とかしなくてはと思ってはいても、その一歩が踏み出せないでいた女性たちは多かったと思います。そこへ、知事として女性の問題に取り組み、このような知事のもとだったら、どんなに具体的な施策がすすむかという見本を示してくださり、また予算編成の時期なども熟知された堂本さんが、手をあげてくださったことは本当にうれしいことでした。
次に、この「男女共同参画対話」実現にお世話いただいた民主党の円より子参議院議員のほか、神本美恵子、下田敦子同議員よりご挨拶をいただきました。いずれも、ヌエックのさらなる充実に加え、新政権の男女共同参画政策を前進させるために尽力したいとのことでした(円議員は、ご自身のウェブサイトでこの「対話」について報告しておられますので、そちらもご覧ください)。
今回は、ヌエックの問題とともに、女性研究者支援予算の縮減見直しについても、要望書に入れられましたが、この点に関して、理系研究者の方から発言がありました。
「日本の理工系の女性研究者は全体の13%しかいない。これは、OECDの先進国中で最低である。しかも、意思決定の場についている女性は少ない。そこを何とかしようということで、[color=red]『女性の参画加速プログラム』[/color](概要図・本文・参考)が行われていた。自民党の政府でさえそこまでやってきた。女性研究者への支援がスタートしてまだ3年にしかならないのに、これからという時に、3分の1縮減となると、事業ができなくなる。」
これに対して、呼びかけ人の一人である原ひろ子さんより、「昨年、国立の7大学学長による「U7“男女共同参画”に係る共同宣言」があり、大学での男女共同参画をすすめるという決意が宣言されたが、その矢先の削減はまことに残念である」という補足がありました。
私も理系の出身ですが、かねてから女性が理系の分野から引き離されていることを残念に思っていました。それが、数年前から理系研究者を増やそうという動きが出てきていたので、よかったと思っていたのですが、まだ芽を出したばかりでもう潰されてしまうのは、あまりにひどいのではないかと思います。しかし、このような動きを知っている人は多くないと思います。女性の問題はあらゆる分野を含みまたそれぞれに繋がりがありますから、今回の要望で、ヌエックの問題と共にこの問題が明らかになったことは、とてもよかったと思いました。
このあと、参加者よりいろいろな立場からの発言が相次ぎました。「利用率や収益が問題にされているが、ヌエックの目的からすればそれはおかしい。むしろ目的の達成率という観点から見てほしい」「ヌエックを独立行政法人にしたのが、間違いではないか。収益が上がらなくても、やらなければならない大事な事業があり、また、海外から高い評価を受けている研究などの実績もあるのだから、国立の施設として予算を確保し、その役割を十分果たせるようにしてほしい。」
また、ヌエックでボランティアとして活動されている方から、「お茶を通じての国際交流ボランティアをしているが、海外からいらっしゃる方などに、非常に好評である。日本国内だけでなく、国際的にも大きな役割を果たしているヌエックをみてほしい。」という発言もありました。
ヌエックでは、広い庭園の手入れ、館内の生け花、新聞の女性情報の切り抜き、そしてヌエックロゴ入りTシャツの販売を通じての寄付など、たくさんのボランティアが生き生きと活動しています。このように多くの熱心なボランティアに敬愛されている公共の施設は珍しいのではないでしょうか。
このようないろいろな意見の底に流れていたのは、「ヌエックは、収益を上げることを求められる独立行政法人であることが無理を生んでいる。そこがなんとかならないだろうか」ということでした。これらの意見を受けて、円より子さんから、「この運動を、ヌエックを国立の施設に戻そうという運動に切り替えてもいいのではないか」という提案があり、参加者から大きな拍手が起こりました。
最後に、堂本さんより、「このようないろいろな議論ができてよかった。今回は、スタートというよりはまだ助走にすぎないが、ヌエックの問題も含めて、男女共同参画を推進していこうという全国的な運動にしていきたい。今回(12/3)は、文科大臣だけだったが、今後鳩山内閣総理大臣、小宮山男女共同参画会議議長などに要請書を提出するので、全国から賛同者を募りたい。みんなでがんばりましょう」との締めくくりの挨拶があり、一時間にわたった実り多い対話集会は終わりました。
この後、文部科学省政務官室で、代表者が高井美穂政務官と面談し、今回の要請の趣旨を、堂本暁子さん・原ひろ子さん、女性科学者を代表して都河明子さんから説明しました。そして、川端文部科学大臣に、高井政務官を通じて要請書をお渡しいただくようにお願いしました。
また、民主党太田和美男女共同参画担当局長に船橋邦子さん、黒岩秩子さんが要望書を提出しました。
今回の集会に参加して、一番感じたことは、「ヌエック」は、まだまだ広く理解されていない、誤解が多いということでした。創設以来33年間にわたり数々の成果をあげてきているのですが、それを知っている人は圧倒的に少ないのではないでしょうか。女性の問題で活動している人たちからでさえ、「地域の女性センターがあるから、『ヌエック』は必要ない」と言われることもあります。しかし、国の機関が予算削減になると、都道府県も予算がないのは同じなので、やはり女性センターの事業は必要ないかもしれないということになり、地域の女性センターにも大きな影響が及ぶのではないかと思うのですが、このように考える人はあまり多くはないのが現実だと思います。
今回の参加者の中からも「ヌエック」についてPRがもっと必要だという意見が出ましたが、これは不可欠だと思います。
「ヌエック」について、理解を広めるという点では、このWANは、とても力のあるツールになりうると思います。今まで利用してきた方々から、どのように利用したか、それがどのように役に立ったかというような体験談を寄せていただいたり、どのようにすれば「ヌエック」がもっとよくなるのかという意見を集めることもできるのではないでしょうか。
今回の「ヌエック」の問題は、政権交代後の男女共同参画政策について目を向けるよいきっかけになったと思います。新政権のもとで、日本の「男女平等」が大きく飛躍することを願います。 (荒川 ユリ子)
(なお、この後、12月14日に、円さんと堂本さんらが鳩山総理大臣と対話したとのことです。)