2010.06.09 Wed
この5月から毎月1回1年間の予定で、竹中恵美子さんが女性労働と社会政策を論じるセミナーが開講されています。長年竹中さんとともに女性労働問題への取り組みを担ってこられた関西女の労働問題研究会に数名のアクティヴィストや研究者が参加してコーディネートし、大阪府男女共同参画推進財団の共催によって、ドーンセンターで開催しています。定員をはるかに上回る申し込みが殺到し、残念ながら参加できない方々がかなりいらっしゃいます。WANでは参加者による毎月のセミナーの報告を掲載し、ご関心を持ちながら直接参加できない全国のみなさんに、セミナーの内容をお伝えしていくことになりました。 フェミニズムにとって、その当初より「労働」は最重要課題でありながら、フェミニズムと労働問題の関係には複雑な側面があり、それは今日なお解決されているとは言い難いものがあります。たとえば男女共同参画政策において労働や雇用の問題が必ずしも十分に取り組まれていないことには、縦割り行政の弊害だけでなく、女性労働問題の問題構成上の困難が反映されていると思うのです。その主要な原因は一言でいうなら、「労働」の概念がとても「男性中心的」に想定されていて、「カネを稼ぐ男性世帯主の労働」を標準としたものになっていることによるのではないでしょうか。その意味で竹中先生がパイオニアとして長年取り組んでこられた「女性労働」とは、「労働」の外部を、とりわけ家事育児介護などの、「労働」に入れられてこなかった仕事を含む、ただの労働よりはよほど広い視野に立つ課題であると思います。今まで主婦と「働く女」の対立が煽られる現象が、繰り返し生じましたが、両者は同じジェンダー構造の裏表に過ぎません。両者をつなぐアンペイド・ワーク論の重要性を強調する竹中先生のセミナーに、参加者のひとりとして大いに期待しています。特集による報告に是非ご注目ください!!
セミナーカリキュラム
第一回 a)講義をはじめるにあたって
なぜジェンダー分析が必要か/フェミニスト経済学の登場とその意義
b)受講動機を中心に交流
第二回 1.資本制経済の仕組みとジェンダー
2.「労働力の女性化」とジェンダー
第三回 a)男女賃金格差について
1.労働市場における女性の地位と賃金構造
2.日本の賃金交渉機関の特殊性とジェンダー
b)全電通の育児休職制度(1965年協約)をめぐって
第四回 「均等法」成立と前後して行われた平等をめぐる3つの論争
1.「保護」か「平等」か
2.「機会の均等」か「結果の平等」か
3.女性労働の「特殊理論」批判について
第五回 日本的経営とジェンダー構造
1.日本的経営とフレキシビリティ(弾力性)の特質-1990年代初頭まで
2.新・日本的経営への移行とフレキシブル化
3.ジェンダー視点からみた税制・社会保険制度
第六回 経済のグローバル化と規制緩和
1.1995年以降本格化する日本の規制緩和
2.規制緩和に向かう労働法制と女性
第七回 画期となる国連「北京世界女性会議」と行動要領
なぜいまアンペイド・ワーク(UW)か
第八回 再燃する同一価値労働同一賃金/コンパラブルワースの意義
第九回 労働におけるジェンダー・アプローチの現段階
第十回 セカンド・ステージに立つ家事労働論
「ケアレス・マン」を越えて
第十一回 a)男女雇用平等政策のいま-世界の流れ
b)日本の政策の到達点とその問題点-格差社会の中のジェンダー
第十二回 むすび-ディーセント・ワークをめざす日本の課題
私たちの求めるワーク・ライフ・バランスとは
いだくみこ:竹中セミナー コーディネーターのひとり
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