2010.10.07 Thu
働く女性の人権センター いこ☆るは、関西のコミュニティ・ユニオンで活動する女性たちを中心に、さまざまなグループの女性た ちが集まり、2004年1月に設立されました。雇用の場で差別され続けてきた女性たちが、性の違い、雇用形態や労働時間の違いを超えて平等に働ける社会を 実現するために活動を続けています。 愛らしい星のイメージ・キャラクターがステキです。運営委員の赤羽佳世子さんにお話をうかがいました。
WANの団体紹介頁はコチラです。
「いこ☆る」のHPはコチラです。入会案内を是非ご覧ください!!
【星のキャラクター】
○ 「いこ☆る」は名称に星のマークが入っていますね。星のキャラクターもとっても印象的です。この星の画像がWANの頁にときどき出てくるのが可愛くて、デザイン面でもサイトをなごませていただいています。
どうして、こういう星のマークやキャラクターを採用したのか、まずお伺いできますか。
○赤羽 いわゆる既存の労働運動みたいにしたくないというのがありまして。こぶしを振り上げて、「シュプレヒコール」と叫んで、机をどんどんとたたいて。女たちの感性って、男、女って言いたくはないんだけれども、女たちの持っているべき感性というふうに要求されていたことなんですが、財産でもあると思うんです。優しさであるとか柔らかさであるとか。女だからといって非暴力であるとは限らないけれど、暴力的なものを嫌うというか、拒否するというか、そういうところにつながっていけるような、柔らかい部分がほしいねって。
○ それまでの労働運動とは全然違うスタイルで、女性たちに異なるメッセージを発している、というところに、私自身とても共感します。
○赤羽 私たちでも、かなり気を付けて、業界用語を使わないように心がけていますが、何か文章がずらっと並んでいたり、固い感じの言葉がどうしても多くなりますから。
○ 業界用語、ありますね。(笑)
○赤羽 「均等待遇」という言葉は広めていきたいと思って、あえて、四文字熟語ですが、使っていますけど。「労働法」関係の言葉などそうでなくても難しい言葉になってしまうので、よほど気を付ける必要があります。少しでも、遠い世界のことじゃないよって。身近なものとして、みんなで考えていこうよっていう気持ちで、若い人たちにも抵抗なく見てもらえるようにと、キャラクターを考えました。
いまのリーフレットには載っていないんですが、最初のリーフレットで、「か行変格や」って言って、マンガがあるんです(左図)。「いこ☆る」ってニックネームを付けたのも、イコールの「いこ☆る」なんですが、ただ、イコールと言ってしまったら面白くない。「いこ☆る」やから、か行変格で、私は怒る、私は生きる、私は行ける、で、私が「いこ☆る」ですと、続く。「働くのなら、結婚も、出産もあきらめろということ? 怒るよ」っていうメッセージです。今日も、無駄足、この先仕事が見つからなかったら、生きるのが大変やということです。でも大丈夫、みんなで手をつなげばいける。で、人権センター「いこ☆る」ができた、というわけです。
○ なるほど!しかし、技がありますね。私は、ほんとうに日々困っている普通の女の人が、伝統的な、いわゆる「男らしい」スタイルの労働運動だったら、絶対、近寄れないと思うんですよ。
○赤羽 私たちもそうだったけれども、別の世界、何か闘うぞっと言われても、闘う、いや、そんなことようせん、みたいなね。だから、そこで、言葉や雰囲気を柔らかくということでも、けっこう、この「いこ☆る」ちゃんは活躍してくれています。
○ 日常の生活と地続きですよね、本来、労働運動って。だから、日常の延長で運動がやれるという感じですと、入りやすいですよね。
【「労働」でつながる平場のネットワーク】
○ 「いこ☆る」はある種のネットワークですよね。それぞれの運動、グループのまとまりがあって、そのネットワークとしての「いこ☆る」。
○赤羽 正社員で働いてきた方たちも、非正規で働いてきた私たちも、みんなで寄ってたかってつくった。研究者も、弁護士さんたちも、呼び掛け人に入ってくださったし、いわゆる労働分野だけではなくて、女性たちのつながりが大きかったかなと。それまでの女性たちの運動の上に乗っかってつくれたというところが。
○そうですね。ネットワークであるが故に多様な活動をなさってますよね。 いまやっている活動を見ても、「アサーション」とか、「ケアワーカーのつどい」とか、かつての労働運動の中心的だった課題から抜けていたところに焦点を当てていらっしゃいますよね。女の運動の財産みたいな感じで。労働運動と女性運動の両方を受け継いだというか。
○赤羽 なかなかの力不足で、自分たちの思うとおりに広げてはいけていないんですけどね、ケアワーカーや、女性センターで働く人たちの問題もやっています。シングル・マザーという視点でも労働問題を考えています。これって、やはり女性の労働問題が、けっこう集中して出ているところなんですよ。で、ケアの問題から労働問題に関心を持たれて、運営委員になってくれている方もいます。ケア労働でホットラインをやったことがあるんですよ。「いこ☆る」とコミュニティ・ユニオン関西ネットワークとが一緒にやったんですね。労働の問題は、もちろん関西ネットの男の人たちはよく知っているし、ケア労働者のこともよく知っているんだけれども、介護保険がどうのこうのという話になると知らないんですよ。その方面は、その方が一手に引き受けました。ケアワーカーの労働条件というのは、介護保険に縛られているので、介護保険のことが分からないと対応ができないところがあります。ホットラインはこの事務所でやったんですけれども、面白かったですよ。お互いの力がプラスになって、うまく出すことができたかなと思うんです。関西ネットのベテランが逆に、うちの運営委員にレクチャーを受けていました。
【自分の問題、人権としての労働問題】
○やはり、いままでの労働運動が、基本、賃上げ要求ばかりやってきたけど、そこから抜け落ちているものがいっぱいあって、特に、今までの運動から恩恵を受けてこなかった層に、蓄積していて、「いこ☆る」はそこをやっていらっしゃるなという感じですよね。
○赤羽 ああ、なるほど。そう言われてみたら、そこを意識してやったわけではないんですけれども。結局、そこに、女たちが多いでしょう。 だから、こだわるんです。自分の問題から始まってますから。メンバーでもね。例えば、いまのケアワーカーの例で言ったら、自分自身がやはりケアを受けていく立場として、いまのままでは、とんでもないことになると。これはちょっと放っておけないというところから始まっています。自分の問題から始まっているから、大きな組織の中で労働組合があって、頭の上で要求が決まっていくような活動ではないんでね。
○「いこ☆る」がすごくユニークだったと思うのは、「人権」という言葉が入ってますよね。労働問題と人権問題というのが、かつては何か、ちょっと別ものだったんじゃないでしょうか。
○赤羽 階級論から始まっているではないですか、労働運動って。それを人権のところに広げていったのですが、階級という言葉ではなくて、人権だから女性たちの運動にとっては、階級論がどうのこうのというような、男たちの議論みたいなところではないところで広がっていった、人権センターということで広まっていったということがあると思うんです。
○階級というと個人ではなくて、層としての立場になってしまいますよね。それはそれで、確かに必要な視点でもあるかもしれませんが、人権というのは、もっと一人一人の個人の権利というか。
○赤羽 確かに、私がここだったらできると思ったのは、やはり、一人一人を大事にするということだったんですよね。既存の組合でパート労働者を入れてくれたとことが昔でもあったんですよ。でも、そこでは、パート労働者自身の要求なんていうことは聞かれないんです。私自身も経験しました。そこは某大手損保で、パート労働者は組合に入れなかったのですが、ある日仕事場に行くと、組合の機関誌が一応、私の机の上にも配られていたんですよ。そこに「エリアスタッフ パート労働者なんですが”」の、労働条件が決まりました」とかということが書いてあるんです。『組合ニュース』ですよ。当事者の私たちは何も相談もされていないし、聞かれてもいないし。こんなん決めるけどどう、というヒアリングもなかったし。そもそも組合に入るかとも言われていないの。
○当事者に話ぐらい聞かんかいって。
○赤羽 これは、最近の話なんですけれども。ある、某大手産別が非正規労働者の組織化をしていかなければいけないということで、私の友人のところに、「組合、つくりませんか」と言ってきた。どう思うと聞かれて、中に入って変えるのも面白いんちゃうとか言って勧めたら、彼女たちはオルグの言うとおり組合を作った。
そうしたら、最初の春闘のときに、知らん間に賃上げ要求だけ出されていたんですって。「賃上げはもちろんしてほしいけどね、私たちの現場には、いっぱい、いじめとか、セクハラとか、いろいろな問題あるんや」言うて。もう完ぺき、頭ごなしなんですよ。次の年、春闘の動き始める時に、そろそろ始まるから、自分らの要求をまとめときやって、伝えたんですよ。何も知らずに組織化されてしまっても、要求を出すことすらできないんです。でも、疑問は持っているわけ。「なんか知らんけど、知らんうちに、賃上げだけ決められた」とか言って。
○ パートの要求が全然、全体の要求にならないですよね。
○赤羽 ええ。要求を言うことでも、ものすごく勇気がいるわけじゃないですか。訳が分からんと、パートで働いていた「おばさん」がね、これは、あえてそういう言い方をするけれども、ある日突然、組合の会議をしますから、職場代表として出てくださいということがあったとしても、男たちがずらっといる中で、なかなか言えないですよね。
○そういう場では何か、特殊な言語が飛び交うわけで。
○赤羽 そう、そう、そう。それこそ、業界用語が飛び交うわけで。ずらっと並べられている議題も、自分とは関係ないことばかりなんです。会議に行っても最初は訳が分からへん。どこで、ものを言っていいかも分からない。もともと女性は、手を挙げて話をすることをよしとされていないでしょう。だから、ユニオンでは、ここで発言してくださいということをやるんです。「誰々さんいかがですか」というふうに。ユニオンは必ず近況報告をするんですよ。しゃべるのが嫌な人は、しゃべらんでもいいけれど、名前だけでも言うて帰ってほしい。一応、来た限りは、何か一言言って帰ろうねということで。それで、訓練していっているのね。だから、うちのユニオンの女性たちは、大きな集会とかに行っても、ちゃんと発言できます。
○大切なことですね、自信が付くしね。
○赤羽 まず発言することが自分たちでやれるんだという自信へとつながるので、そういう自信から付けていかないといけないのね。
【個人の力をつけるアサーション】
○「いこ☆る」でアサーションをされるでしょう。あれ、すごく大事だなと思います。
○赤羽 ああいう講座というのは、労働相談などの中から出てくることが多いんです。相談の中で、シングル・マザーの相談が多かったり、ケアワーカーの相談があったりとか。それを取り上げてやってきているんです。
○ 相談の中で、どういうニーズがあるかが、具体的に分かってくるのですね。
○赤羽 ここのところハラスメントによるメンタルの相談がけっこう多いです。メンタルになる前に、もうちょっと賢うなろうよということで、アサーションをします。 一番困るのは、簡単に解雇されてしまうことです。自己都合にしろ、解雇にしろ、オーケーを出してしまったら、あと、ちょっとしんどいじゃないですか。首になりました、解雇されましたと言うて来られたら、なかなか、ひっくり返せないんですよね。「はい」と言ってしまってはいけないんです。
今年のアサーションは、次の段階です。権利を知っていても出し方が下手なんです。一人で交渉をすると、まず負けますよ。うかつに知っているということを振りかざしても、うまくいかないんです。気持ちはすごく分かるんだけれども。言うのは当たり前のことなんだけれども、実際、職場でそれをやると、上手に切られてしまうんですよね。
居心地が悪くなったり、いじめられたり、自分から辞めざるを得ないようにもっていかれたり、あいつはうるさいやつやっていうことで。だから、ちょっとしたことだったら、それこそ、相手の気持ちを尊重しながら、伝えることで解決していくことができると思うんです。最近の労働相談で、けっこう、そういう事例が多いです。
結局弱い立場やから、いじめられて、メンタル行っちゃうと、本人が一番しんどいし、解決するパワーが落ちてしまうんです。それで、まずアサーションや、ということになるわけです。それって、労働の現場だけでなくて、もちろん家庭でも、地域でも使えることですよね。少しでも、女の人たちが生きやすくなる。特に女たちというのは、要求することに慣れていないんかなと思う。だから、とことん追い詰められたところで言うから、感情的になってしまうんですね。とことん我慢して、もう、どうしようもなくなってから、ばんと出すから。それって、もう、かなり感情的に、相手のことを考える余裕なくってるでしょう。
○だからゼロか100になっちゃって。もう、適当なところで折り合うという、交渉にならないのよね。
○赤羽 カウンセリングだったら、そうね、そうねって、寄り添うということでいいんだけれども。実際、生活の現場では、落としどころが必要です。次に進んで行かないといけないから、決めていかないといけないじゃないですか。そのときに、いかに自分に有利な、交渉ができるかでしょう。もちろん、ユニオンとか「いこ☆る」は手伝うんだけれども、それ以前に、あまり、ひどいとこまで行っちゃうとね。
○ あと、修復のしようがないものね。
○赤羽 うん。もう、金銭解決ができても、職場に復帰はできない、実際に。そこまで行く前に、もうちょっと、ちゃんと対等な立場で話し合いができるような力を身に付けましょうということですよね。夫婦関係とかでも、まあ夫婦は私は別にどうでもいいんですが、(笑)、分かってくれるはずだとか、私がこんな思いをしているのにとかって、伝えないと伝わらないじゃないですか。そこができたら、女性だけでなく男性もなんだけれども、社会がちょっと暮らしやすくなるかなって。男でも危ない人はいっぱいいますけれども、でも職場においては比較的訓練されているかなという面もありますね。
○ そうなのね。家の中は分からんけれども。
○赤羽 分からんけどもね。その、うっぷんが全部家へ来ている可能性はあるけれども。
○ その可能性はあるけれども、社会的には、組んで何か仕事をするとき、おじさんたちは楽な場面はありますね。
○赤羽 訓練されてはるからね。
○ そうですね、やはり、女が、あまり社会的な行動に慣れていないという、歴史的な経緯がありますからね。
○赤羽 やはり、女たちの権利ばかりということではなくて、男たちの経験のいいところは学んでいくということだなって思います。
【ネットワーク維持の極意は「手を離さないこと」】
○ ネットワークの維持は、それ自体たいへんな活動ですよね。
○ 赤羽 いろんな人たちの集まりですから、思想信条のちがいを超える関係作りが大事です。男性の労働運動の党派対立のようなものは女の中にも存在していますから、「手をつなぐ」というよりは、「手を離さない」努力が必要です。いざというときに「手をつなげる」ように、いつも微妙なバランスを保ちながら意識的に「手を離さない」ことです。ここでは、男性の運動を反面教師にしたいですね。
全国に多くの拠点があり、それが平場の関係であることが大切だと思います。パート法改正の時は、均等待遇キャンペーンを、東京、名古屋、大阪、福岡で行いました。種は蒔かれていると思います。
○ これからの課題としてはどのようなことがありますか?
○反貧困キャンペーンのときに、外国人労働者の相談がありました。コミュニティユニオンの通訳に手伝ってもらって話をしましたが、言葉の問題はとても大きいです。困っている人たちは日本語では十分言いたいことが言えず、こちらも理解しにくいです。労働相談には十分なコミュニケーションをとっていく必要がありますが、そのためには通訳の助けが必要です。これは今後の大きな課題です。
もうひとつは、私のような世代にスタッフが偏っていることです。若い人たちは相談には来るし、ユニオンへは参加するが、「いこ☆る」の活動まではむずかしい。 「いこる」の活動には、組合活動や運動の経験、知識が必要で、単に人数が増えても、それだけではだめで、労働相談、さまざまな組織との連携、ニーズに答えるイベントの取り組みなどの多様な活動は、単に頭割りで分担できる性質のものではないように思います。
○とくにネットワークとしての課題はどうでしょうか。
○赤羽 労働運動は目の前の成果をあげなければならないので、長期的な本来めざすべき方向を見失うことがありがちです。竹中セミナー(*)で育休要求の話が出たときに、竹中先生が育休に反対する立場を紹介されて、なるほどと思いました。育休というと女性の要求が認められたように思いますが、育児は女性だけが担うものではなく、女性も仕事をしながら育児もできるようにしていかなければならないですよね。研究者の視点というのは、長期的展望を示すことができるという意味で、運動にとって必要であるとあらためて感じました。
それから、さっきも言いましたが、今非常に多いのがメンタルに追いつめられているケースです。フェミニスト・カウンセリングと連携できたら、助かるだろうなと思うんですね。労働相談でメンタル面でのフォローまでも行うのは限界があり、負担も大きいのです。でもフェミニスト・カウンセリングは医療保険の対象ではないため、費用が安くなく、薦めにくいのですが、メンタルに落ち込んでいる場合には、まずは精神的に立ち直って、それから労働問題に取り組む方が、うまくいくようです。保険や補助金など、公的なサポートがあればと思わずにはいられません。
○長い時間、どうもありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。WANもネットワークの役割に貢献したいと思っています。
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