2010.12.23 Thu
規制緩和の最近の動向
11月19日の第6回講座「経済のグローバル化と規制緩和」は、堀あき子さんのレポート⑥の通り、ちょうど竹中先生のお誕生日と重なったため、かわいい花の贈呈とハッピーバースデイの歌で始まりました。毎回81歳とは思えない熱の入った丁寧な資料準備と講義に、受講者の感謝とご健康をお祈りする気持が大きな拍手に込められました(写真参照)。
この日は、1年間の講義の折返し点なので、12月22日の交流会に向けて、受講者の「感想・意見・希望」の集約日だったのですが、嬉しい内容がたくさん寄せられました。詳しくは今後に譲るとして― 系統的な講座は初めてという人も相当いて、モヤモヤしていたことが、定義されることではっきりしてきたとか、先生の熱意あふれる講義と受講者の緊張した熱気や活発な質問による「高揚感」に刺激されているというような感想が多く、今後の希望として、受講者や企画委員との交流や、どのようにすればいいのかの討議を求めるものが多かったのが特徴です。後半の展開が楽しみです。
「規制緩和」の歴史的な背景と、グローバル資本の狙いと労働現場への影響、欧州でのフレクシキュリティの取組みに学ぶべき原則については、きっちり丁寧に展開されたので、企画委員の私からは、労働者派遣法「改正」法案と、有期雇用法制化についての「規制緩和の最近の動向」について報告しました。
<労働者派遣法「改正」法案⇒今臨時国会継続審議>
派遣切りの嵐と非正規労働者の増大に対する怒りの世論に対して、本年3月19日に閣議決定された労働者派遣法「改正」法案の骨子は以下の通り。
◆「事業規制の強化」― ・登録型派遣の原則禁止(専門26業務等は例外) ・製造業派遣の原則禁止 ・日雇派遣の原則禁止
◆「無期雇用化や待遇の改善」― ・派遣先労働者との「均衡」考慮 ・マージン率の情報公開など
◆「違法派遣に対する迅速・的確な対処」― 違法派遣の場合、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申込んだものとみなす
この「改正」案の問題点は、登録型派遣の原則禁止においても、専門26業務を除いている点や、あくまで、「均衡待遇」であって「均等待遇」ではないことをはじめいくつもあるが、特に注意したいのは、違法派遣の場合の「みなし雇用」において、派遣先企業が直接雇用に転換する場合に、派遣元と同一条件にするということなので、派遣元で3カ月の有期契約であれば、一旦直接雇用して3か月で雇い止めとなり、期間満了という解雇の合法化につながる危険性があります。
このセミナーの時点では、11/17に民主党・国民新党・社民党の幹事長会議で、「今臨時国会審議入り」が合意されたという事態でしたが、その後11月26日衆院厚生労働委で法案の上程説明はなされたが、結果として、継続審議となった。
現行法規よりは「規制強化」になるのではという意見に対しては、11月9日に日本弁護士連合会が開催した院内集会で、非正規争議当事者から、「直接雇用されてもその後の雇い止めが簡単にできる。無期契約を原則とし、均等待遇を課するものでないと、労働者保護や規制強化に値しない」の声が次々と出され、「日弁連はこの法案に反対」と表明されたという事実を示しておきたいと思います。
労働者の雇用は直接雇用という原則にもどるべきだと思います。
<有期雇用法制化の動き>
9月10日「有期労働契約研究会」(厚生労働省労働基準局長の委嘱)が「報告書」を発表しました(詳細は厚生労働省ホームページ)。
これを受けてすでに10月26日より、労働政策審議会(労政審=公・労・使の3者構成)で検討が始まり、2011年12月には「有期労働契約の法制化」の方向性が出される予定となっています。
現在の日本の「貧困問題」の根本に、非正規雇用=有期契約労働の蔓延があり、女性労働者に関して言えば、“ワーキングプアー”が社会問題化される以前からそうでした。
「報告書」は、入口の規制も出口の規制もゆるやかで、労働者保護にはほど遠いものです。
◆ 無期労働契約を原則とし、「有期労働契約の締結は一時的・臨時的業務等、合理的な理由がある場合に限る」という、締結事由(入口)の規制を明確にすべき
◆「同一価値労働同一賃金原則」で均等待遇を法制化すべき
◆反復更新したら、無期契約とすることの義務化など、更新・雇止め(出口)を規制し、ILO158号(使用者の発意による雇用の終了に関する)条約・166号勧告(同勧告)の批准を―などが重要です。
以上の動向を注視して、真の労働者保護制度を樹立するための世論を大きく作り出して
いかねばと、改めて決意をしたセミナーでした。
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